マスク氏、共和党議員らを激しく批判 トランプ氏の税制・歳出法案に暗雲

アメリカのドナルド・トランプ政権で130日間、「特別政府職員」として政府の「ムダ削減」を主導し、先週政権を離れた富豪のイーロン・マスク氏が、強硬な政権批判者に転じている。
トランプ氏肝いりの税制・歳出法案の先行きが危ぶまれる状況となっている。
マスク氏は3日、自身が所有するソーシャルメディアのXへの投稿で、トランプ政権の税制・歳出法案を非難。
「もう我慢できない」、「不快で忌まわしい」とし、「賛成の投票をした人は恥を知れ」、「間違ったことをしたと自分でわかっているはずだ」と激しく責めた。
法案には、巨額の減税と防衛費の拡大が盛り込まれている。
先月、下院で共和党の賛成多数で可決され、現在、上院で審議されている。
4日午後には、マスク氏はさらに態度を硬化。
Xで有権者に対し、反対の声を議員に伝えるよう呼びかけるとともに、「アメリカを破産させることは許されない!」、「法案をつぶせ」と訴えた。
投稿でマスク氏は、この法案は財政赤字を増やし、国民に借金を背負わせることになると主張。
法案を支持する共和党議員らに向け、来年の中間選挙で「米国民を裏切った政治家全員を落選させる」と警告した。
この発言が、共和党議員らに不安を広げている。
下院で法案に反対した共和党議員は3人だけだった。
もしマスク氏が大多数の共和党議員に牙をむけば、中間選挙に直面する現職にとっては頭の痛い問題となり得る。
マスク氏は昨年の大統領選挙で、共和党議員の支援に何億ドルも投じた。
第2次トランプ政権の後半でも下院の多数派であり続けたい共和党にとって、深刻な打撃になりかねない。
ホワイトハウスはこの状況に慎重に対応している。
米メディアによると、ホワイトハウスはマスク氏の批判について、電気自動車(EV)の税控除を含むグリーンエネルギー補助金の削減が法案に盛り込まれていることへの反応だと、説明しようとしているという。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は3日、法案に対するマスク氏の見解について、トランプ大統領は「すでに知っている」と説明。
「これは大きく、美しい法案であり、(トランプ氏は)それにこだわっている」と付け加えた。
共和党の有力議員らも同様に、慎重な姿勢を示している。
トランプ氏の忠実な支持者であるリンジー・グレアム上院議員は4日、法案について、「改善の余地はある。だが、忌まわしいものではない」とBBCに話した。
一方、米ニュースサイト「アクシオス」は、マスク氏の盟友のジャレッド・アイザックマン氏を航空宇宙局(NASA)トップに指名するのを、トランプ氏が取りやめたことも緊張の原因だと報じた。
マスク氏の批判は、上院の予算強硬派の共和党議員らに力を与える可能性もある。
彼らはすでに、この法案が連邦政府の赤字を今後10年で数兆ドル規模で急増させることに懸念を表明している。
マスク氏は、現在の法案への反対を表明しているランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)とマイク・リー上院議員(ユタ州)のXの投稿を拡散している。
これには、「ランド・ポールとイーロン・マスク対ドナルド・トランプだ」という見出しの投稿も含まれている。
こうした強硬派の議員の意見が通り、人気のある社会制度に対する新たな支出削減が加われば、リサ・マコウスキー上院議員(アラスカ州)やスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)ら中道寄りの共和党議員らの反発が予想される。
民主党議員が全員反対すると仮定した場合、上院で法案を通すには、現在53人いる共和党議員のうち4人以上に反対票を入れさせるわけにはいかないためだ。
マコウスキー上院議員はBBCの取材で、マスク氏の4日の発言が具体的にどんな影響を及ぼし得るかは語らなかったが、マスク氏は「インフルエンサー(ソーシャルメディアで影響力のある人物)であり、彼の言葉にはインパクトがある」と述べた。
参照元:Yahoo!ニュース