「ペットボトルの牛乳」少ない理由は? 2007年に解禁したものの

牛乳の写真

四角い紙パックや瓶での販売が一般的な牛乳だが、茶など他の飲料のようにペットボトルに入った商品はなぜ身近にないのか。

軽くて持ち運びやすいため、ニーズもあるように思える。

北海道で酪農を担当する記者が調べたところ、ごく少数だが流通はしていた。

取材を進めると、普及が難しい牛乳特有の事情が見えてきた。

手始めに、日本乳業協会に聞いた。

日本では、安全面での懸念からペットボトル入りの牛乳の製造は食品衛生法で禁じられていた。

乳業メーカー側の要請を受け政府は2007年、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令、現・乳等命令)を改正。

雑菌が繁殖しやすいなどの特性に注意することを条件に、解禁された経緯があるという。

同協会は省令改正を受け、①容量は、常温で持ち運びせず一度で飲み切ると想定される350ミリリットル以下か、直接口で飲む、または常温で持ち運ぶことが想定されにくい720ミリリットル以上とする②10度を超える場所に長時間置かないことなどを容器に表示する──といった自主基準を制定。

安全に商品を販売するためのルールは整備されている。

「瓶形状」で差別化 では、現在実際に製造・販売されている商品はあるのか。

同協会から「流通量は少ないが、タカナシ乳業(横浜市)が取り扱っている」と聞き、同社に詳細や開発経緯を問い合わせると、書面で回答が得られた。

同社は、17年4月からペットボトル容器の牛乳を販売する。

容器の形状が牛乳瓶型で、「瓶容器の親しみのある形状も生かし、差別化できると考えて商品化に着手した」(商品部)という。

原料には北海道浜中町の指定牧場で生産された、乳脂肪分4%以上の特選規格の生乳を使用。

容量は同協会の基準を踏まえて飲み切れる200ミリリットルとし、光による風味劣化を防ぐため、専用の遮光性フィルムも導入した。

現行商品の「特濃牛乳 200ml」は一部小売店で販売され、同社のオンラインショップからも購入可能。

消費者からは「紙くささがなくておいしい」「小さな子どもでも1人で持ちやすい」などの声があるという。

同社はペットボトル容器が紙パックや瓶より優れる点について、輸送効率の良さや輸送時の環境負荷の少なさを挙げる。

容器の形状や容量の自由度が高い点もメリットとする。

しかし、大手を含めほとんどのメーカーは解禁から15年以上たっても商品化していない。

同協会によると、衛生面への根強い懸念や容器の開発、設備投資に高いコストを要することなどが背景にあるという。

同社も「牛乳は日用必需品として購入されることが多く、デザイン性や付加価値を求める人が少ない」(同)ことを指摘する。

参照元∶Yahoo!ニュース