業務で「会社のSNS動画」に出演、退職後に削除してもらえる? 「今の新入社員さん大変やなぁ」同情の声も

SNSの写真

会社で強制的にSNSの動画に出演させられているが、退職するので消してほしい。

弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられている。

相談者によると、勤務先の会社の社長がSNSの活用を推進しており、動画に強制的に出演させられてきたそうだ。

入社時に結んだ雇用契約では、そうした動画出演の業務は盛り込まれておらず、なし崩し的に参加することになったという。

しかし、近々退職することになった。

「SNSなどに出演した動画が残っており今後の就職や生活に影響を及ぼす可能性があるため、全て消去を求めたいのですが難しいのでしょうか」と心配している。

TikTokやXには入社したばかりの社員がダンスを踊らされる動画などが投稿されることもあり、「大変な会社に入ったね…」「今の新入社員さん大変やなぁ」などの反応が上がっている。

このように会社が運用するSNSやHPの動画や写真に映った場合、退職後に削除を求めることはできるだろうか。

労働問題に詳しい島田直行弁護士に聞いた。

自社のプロモーション活動として社員の出演する動画が利用されることが増えてきた。

「社員が出演」というのは、リアリティがありアピール方法として効果的。

だか、出演するとネットを通じて自分の顔などが不特定多数の方にいつまでも閲覧される可能性もある。

これによってプライバシー権あるいは肖像権が侵害されることになりかねない。

ここでは特に問題となる肖像権を中心に検討している。

肖像権とは、撮影されない、あるいは撮影された写真、動画などを公表・利用されない権利。

明確な法律があるわけではなく判例によって認められた権利。

前提として企業が社員の出演した動画を利用するには、出演した社員の同意が必要。

無断で利用したら、それ自体が問題となる。

また、上下関係などを利用して無理に同意させた場合には同意が無効となることもあるだろう。

仮に同意が適切になされたとしてもいつまでも同意が有効とは限らない。

例えば、掲載期限を定めずに社員の同意を得ていたとする。

この場合には在職中でも本人から申し出があれば会社として削除に応じるべきだ。

期限がないからといって社員が無期限での掲載について同意したと解釈することはできないからだ。

また、社員が自社の動画に出演するのは、あくまで「自社の社員であること」が暗黙の前提になっている。

ですから退職すれば、そういった同意の前提が崩れることになる。

したがって退職した社員は、肖像権を根拠に企業に動画の削除を要求できる。

企業が削除に応じない場合には、慰謝料を請求できる可能性もある。

こういったトラブルを回避するためには、出演時に(1)出演すること(2)退職時に動画を削除することを明記した書面を企業と社員の間で取り交わしておくべきだろう。

参照元∶Yahoo!ニュース