「自分も共犯者のような感覚に」 小3から始まった父親からの性的虐待 難しい子どものSOS発信、必要な環境整備は
年間約2000件が発覚している、子どもへの性的虐待。発覚のしづらさに加え、たとえ発覚したとしても詳細がわからないなど、氷山の一角に過ぎない可能性がある。
また、詳細を知るために学校や警察、児童相談所、医師が事情聴取や診察を行う。大人からの質問攻めで子どもが心を閉ざし、真相が闇の中になるケースも少なくないそうだ。
増加していると言われる子どもの性被害について、『ABEMA Prime』で現役医師と当事者とともに考えた。
塚原たえさん(52)が見せてくれたのは、中学2年生ごろに父親と撮った写真。
体を寄せあう仲睦まじい親子に見えるが、実は性的虐待を受けていた。
「父親が覆い被さってきて、痛い・苦しい・気持ち悪いが混ざり、苦痛だった」。
虐待は8歳ごろから始まり、弟も被害にあっていた。
さらに、「私が初めて被害にあった時、母は隣で笑っていた」。
母親もDV被害を受け、中絶を11回していた。
「両親は私が小学生の時、母子扶養手当を目当てに戸籍上は離婚して、本当ならば“母親と子どもだけの家”に父親がいた。何度も蒸発を繰り返した母親に『なぜ助けてくれなかったのか』と聞くと、『怖かったから』と」。
虐待は16歳まで続いていた。
性被害を受けても、子どもたちの相談相手がいない現状もある。
内閣府の「若年層の性暴力被害の実態に関するオンラインアンケート及びヒアリング結果」によると、「誰にも相談できなかった」が52.1%と最多で、「友人・知人」が30.5%、「家族(親戚)」が14.4%、「学校関係者」が6.6%だった。
塚原さんは、子どもは「周囲に言うと家族が崩壊する」と思うこと、「自分が性被害を受けているとわかるまで時間を要する」と話す。
「中学2年生の時、教室で周りの子が『彼氏と~』と話しているのを聞いて、“私は自分の父親だ”と。それまで性被害を受けているとはわからなかった。『外で言うな』とも言われていた。自覚した後も、自分が共犯になっているような感覚から、さらに言えなくなる悪循環だった」。
16歳の時に妹と警察へ逃げ込んだものの、「お父さんを逮捕しても3年で出所するが、仕返しは大丈夫?」と聞かれたという。
児童相談所でも、「面談室で父親と隣同士に座らされた。
『帰りたくない』と言っているのに、『お父さん何もしないと言っているから』と。
殺されるかもしれないという恐怖から『帰る』と言うしかなかった」。
塚原さんが今発信する背景には、さらにつらい経験がある。
「20年ほど絶縁していたが、父親に居場所がばれ、『遺産相続のことで話がしたい』と手紙が来た。怖かったが、しばらくしてから電話をかけた。父親のせいで自殺した弟の名前を告げると、『あの子は死んでも構わないが、たえちゃんが死ぬのは嫌だ』と言われ、『この人はもう許さない』と思った。今私にできるのは、法改正や時効撤廃への働きかけ。弟には毎日『ごめんね』としか言えない。生きているうちに助けてあげたかった」。
子どもが被害を打ち明けづらい現状を改善しようと生まれたのが、子どもの権利擁護センター(通称CAC)。
神奈川県立こども医療センターには、CACが認定した専門の面接官が、警察や児童相談所に代わって聞き取りを行う「面接室」が設けられている。
その様子は、各機関の担当者がモニタリングしながら、必要な情報を共有。最小限の相手のみが向き合うことで、子どもの不安を和らげられる。
しかし、施設はアメリカが950以上あるのに対して、日本では神奈川のわずか2つだけだ。
また、アメリカでは「系統的全身診察」と呼ばれる手法がとられている。
身体のパーツごとに危害歴を聞き取り、性器・肛門も含め全身を診察し、メンタルケアも行う。
こうした診察を行うことで、面接で得られなかった情報を汲み取ることにつながる。
子どもの性被害などの課題解決に取り組む「ふらいと先生」こと、小児科医の今西洋介氏は「性加害は身体的虐待と同時に行われることが多い。全身を見ることで、『違う虐待を見つけてくれた』と開示率の上昇につながる。アメリカでは系統系診察が、DNA鑑定と代わるほどになっている」
「日本では子ども本人が法廷で『この人から被害を受けた』と発言しないと起訴できない。アメリカでは診察結果や、弁護士が聞く司法面接のデータで起訴できる」と説明する。一方、塚原さんは「医師を信用できない保護者も増えている。学校の検診で苦情があったというニュースもある」と指摘。
「そもそも虐待している親は、まず病院に連れて行かない。私も顔を殴られ、右耳の鼓膜が破れて今も難聴だが、病院へ連れて行かない」とも述べた。
そんな中、作成したのが「ヘルプカード」だ。
小さな子どもでも読めるようにひらがなで書かれている。
「自分の身に起きた時、信頼できる大人に差し出せば助けてもらえる』というカードを持たせたかった。子ども自身が『性被害に遭っている』と自覚を持てることが一番大事。そのためには早いうちからの性教育が大事で、3歳でも遅いくらいだと思う」と訴えた。
今西氏は「子どもの声を聞こうという意見が、少しずつ上がっている。国内の小児科医にも、アメリカの学会から“子どもの声”を勉強する動きがある。『子どもが言うことだから』とバカにするのではなく、大人同士はが連携して子どもを守る社会にしないといけない」とした。
参照元∶Yahoo!ニュース