ジャニーズ“当事者の会”立ち上げから1年  何が変わり、何が変わっていないのか?

国連をイメージした写真

元ジャニーズJr.・二本樹顕理(にほんぎ・あきまさ)さんが去年、大きな波紋を広げたジャニーズ問題。

6月26日は、被害者らが声を上げた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の結成から、ちょうど1年を迎える。

勇気を持って、声を上げた人たちにとって、この1年はどんなものだったのだろう。

ジャニーズ事務所・東山紀之社長(当時)
「人類史上最も愚かな事件。鬼畜の諸行だと思います」

日本のエンターテイメントの世界に激震が走った、故ジャニー喜多川氏による性加害問題。

告発したのは、かつてジャニーズ事務所に所属していた被害者たち。

彼らの証言は、未曾有の性加害事件の実態を明らかにしたのだ。 

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さん会見
「子供たちの性被害を見て見ぬふりをしないで、本当に取り組んで頂きたい―」(去年5/31)

1年前、この問題でいち早く顔を出し、実名で告発した、元ジャニーズJr.の二本樹顕理さん。

今は日本を離れ、妻の実家があるアイルランドで暮らしている。

「アイルランド海っていっていいんでしょうか、住んでいる町は海に面しておりまして―」

その二本樹さんが今回、取材に応じてくれた。

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さん
「本当に嵐のような1年でして、性加害を公に告白したことによる、数々のトラウマによる苦しみですとか。私自身、今、医療のカウンセリングを受けております…」

2023年6月26日、二本樹さんが中村一也さんと立ち上げたのが、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」だ。

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さん二本樹の会見
「これを人類史に残る史上最悪の性加害事件として教訓として残す必要がある―」

勇気を持って被害を訴える人が増える中、タブー視されていた問題は、この1年で広く社会の知るところとなった。

事務所側も性加害の事実を認め、謝罪。

被害者への救済を約束し、現在、金銭的補償は、被害を申告した人の4割に支払われている。
 
その一方で現在、この問題は国連人権理事会が取り上げるに至り、5月に公表された報告書では、被害者救済に向けた「道のりは長い」と指摘されている。

そうした中、二本樹さんは、今年2月「当事者の会」を離れ、新たに子どもの性被害防止に向けた団体を立ち上げた。

啓発活動や法改正に向けた働きかけなどを始めている。

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さん「やはりこの先にあるものは、二度と同じような過ちを繰り返さないことが重要。再発防止策については、まだこれから。未来の子供たちを性暴力から守る、そうした活動があるのではないかなと」

二本樹さんは、6月25日から開かれる国連人権理事会にあわせ、現地ジュネーブでのイベントに参加。

子どもたちが守られる社会の大切さを訴える予定だ。

ところが、こうした性被害の問題とは別に、声を上げた人々を襲う深刻な問題がある。

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さん
「連日、誹謗中傷を浴びせられ、出口の見えない暗闇をずっと歩んでいるような、そうした感覚に陥っていました。インターネット上で、不特定多数の方々から誹謗中傷が来るようになりました。過去のトラウマ的体験を、公に話さなければならない、それだけでも非常な苦しみ。(誹謗中傷は)その上に追い打ちをかけられる」

「大嘘つき」、「金と売名」。これらはSNS上で、二本樹さんに向けられたもの。

アイルランドへ移住をしたのも、こうした誹謗中傷から家族を守るためだった。

同じ「当事者の会」のメンバーだった40代の男性は、2023年10月、大阪・箕面市の山中で死亡。自殺とみられています。

「少しでも暮らしやすい社会に変えられるんじゃないかとの思いで、声を上げました。ただ最近、平常心を保つのが難しくなってきました」

背景には被害のトラウマに加え、ネット上で受けた誹謗中傷があったという。

亡くなる数時間前に、電話で相談を受けた森山さんは、「応援してくれてる方々のためにも ちゃんとしなくちゃいけないっていうのがあるので、追い込まれていく。それで自殺したことを考えたら、(誹謗中傷は)殺人と変わらない」

さらに専門家は、こうした誹謗中傷の背景には、日本社会の未熟な人権意識があると言う。 

小川隆太郎弁護士(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
「ジャニーズ問題について、芸能スキャンダルであるというような見方があったんじゃないか。(他者の)人権侵害を見ても、それが自分に繋がっていると思えない方がまだまだ多い。人権問題に対する感性というか、敏感さというのが、まだまだ足りない」

芸能界に夢をもって飛び込んだ子供たちを襲った性加害問題。

元ジャニーズJr.・二本樹顕理さんは、「こうした性被害に対して、声を上げるのが阻まれるような社会であってほしくない。もっと自由に声をあげられるような社会に変わっていってほしい」

参照元:Yahoo!ニュース