全国計16件の心臓移植断念、6人は移植受けられず待機中 特定の施設に受け入れ要請が集中

手術室をイメージした写真

日本心臓移植学会は11日、脳死者から提供された心臓の受け入れを断念した事例が、東京大病院と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)で2023年に計16件あったとする緊急調査結果を発表した。

複数の臓器受け入れ要請があるなどして移植手術の実施態勢が整わなかったことが原因だった。

移植の機会が見送られた患者16人のうち6人は、今なお移植を受けられず、待機中だとした。

緊急調査は、東京大、京都大、東北大の3大学病院で受け入れの断念例が相次いでいるとする、読売新聞の1月1日などの報道を受けて行われた。

心臓移植を行う施設(11か所)に、23年に施設側の態勢を理由に臓器の受け入れを断念したケースを尋ねたところ、東大15件、同センター1件の回答があった。

16件の断念の理由として、東大は「同じ日に別の心臓移植手術があった」(7件)、「同日に2件の移植手術を実施した翌日は対応が困難」(3件)などがあがった。

同センターは、同時期に心臓の受け入れ要請が集中し「4件目は、医師の調整が間に合わず、断念せざるを得なかった」とした。

同学会によると、2施設が受け入れを見送った心臓は、別の施設に登録されているあっせん順位の低い患者に移植されたとみられる。

今回、見送られた患者16人のうち東大の10人は、その後、移植を受けられた。

残る東大の5人と同センターの1人の計6人は、移植を待っているという。

日本臓器移植ネットワーク(JOT)によると5月末現在、心臓移植を待つ患者は842人いる。

澤芳樹・同学会代表理事は11日の記者会見で「今回の調査では、(見送られた患者で)一人も死亡していなかったのが幸いだ。

患者に不利益が生じないように、迅速に対処したい」としている。

断念例が相次ぐ背景には、脳死下の臓器提供件数が増える中、待機患者が多い移植施設に、臓器の受け入れ要請が集中している現状がある。

同学会の発表によると昨年、国内では115件の心臓移植手術が行われた。

同センターは最多の32件を実施し、東大の25件が続いた。

一方、日本臨床腎移植学会と、膵臓(すいぞう)移植の専門家による日本膵・膵島(すいとう)移植学会は同日、読売新聞の取材に対し、独自の実態調査を検討する考えを明らかにした。

参照元∶Yahoo!ニュース