奨学金の「代理返還」に脚光、導入企業は1.4倍に 8カ月で「約2600→3721社」、早期離職防止の効果も

奨学金制度を利用している人をイメージした写真

3月に正式解禁された2025年の大学生の就職活動も後半戦に入っている。

人手不足で学生優位の売り手市場となるなかで企業の福利厚生の一つとして注目されているのが、学生が借り入れた奨学金を入社後に企業が代理返還する制度だ。

導入する企業は急増しており、人材確保や早期離職防止の決め手の一つとしても期待される。

奨学金事業などで学生を支援する独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)によると、奨学金を借りている4年制の大学生の平均借入額は、約313万円にのぼる。

無事に就職することができても、借入額によっては長期間の返済が続くこととなる。

そうしたなかでJASSOが2021年から導入したのが、若手社員の奨学金を企業などが機構に代理返還できる制度だ。

若手社員はその費用が請求されないため実質的な賃上げとなり、企業側は経費の一部とすることで課税優遇を受けられる。

また、就活では福利厚生として学生にアピールができ、入社後は若手の離職に歯止めをかけやすくなるメリットがある。

近年は制度が認知され、説明会などで学生側が企業に制度の導入の有無を尋ねるケースも出てきた。

その影響もあり、2024年10月には2587社だった導入企業数は、約8カ月後の2025年6月末には3721社にまで急増している。

特に、慢性的な人手不足の飲食業や建設業の導入が目立つ。

そば屋チェーンを展開するゆで太郎システム(東京都品川区)は、8年間で最大144万円を代理返還する制度を導入。

現在は社員2名のほか、今後入社予定の学生も利用する予定だ。

同社の担当者は制度の利点について「就活では会社選びの決め手になり、社員がより会社に残ってもらいやすくなる」と語る。

土木・建築工事を手がける日本国土開発(東京都港区)は、8年間で最大96万円を代理返還する。

導入から4年間で対象となる新入社員計52人が利用しているといい、同社人事部は「教育支援の一環として導入しているが、離職防止にもつながっている。制度利用者の離職率は、若手社員全体の離職率より低い」と副次的な効果を認める。

総合人材サービス会社のマイナビの調査では、6月末時点の内々定率は前年比1.1pt増の82.8%。

空前の売り手市場と言われる就活情勢は2026年も続くとみられることから、他社との人材確保の競争に打ち勝つためにも、導入を進める企業はさらに増えそうだ。

JASSOの担当者は「特に人材を必要としている企業へ制度を広げていきたい」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース