なぜ今、「お茶カフェ」がアツいのか? スタバ、タリーズに続きサンマルクまで参戦!大手各社がこぞって拡大する背景

昨今、国内カフェチェーンがこぞって抹茶や紅茶を軸に据えた新業態を増やしている。
なぜ今、「お茶カフェ」戦争が起きているのか。
そして、遅ればせながら参戦したサンマルクカフェの勝算とは?
大手カフェチェーンが次々に「お茶」の新業態を出している。
スターバックスコーヒーのお茶ブランド「ティバーナ」シリーズの商品を扱う「ティー & カフェ」「ティバーナストア」や、タリーズコーヒーのお茶特化業態「タリーズコーヒー&TEA」などがじわじわと店舗数を伸ばしている。
各社、すでにコーヒー市場が飽和していると感じ、お茶市場に切り込んで新しい需要を獲得したい狙いなのだろう。
そんな中、ついに「サンマルクカフェ」もお茶をテーマにした新業態をオープンした。
その名も「サンマルクカフェ&茶」。
店名を聞いて「えっ!」と思った。
ライバル店「タリーズコーヒー&TEA」の「TEA」を「茶」と言い換えただけではないか。
お粗末とも言えなくもないネーミングに、思わず苦笑いした。
しかし百聞は一見に如かず。
筆者はオープン当日、店へ足を運んでみた。
そこで見えてきたのは、単なるお茶マーケット開拓だけでないサンマルクの“狙い”だ。
「サンマルクカフェ&茶」があるのは神奈川県相模原市、町田駅から横浜線で一駅の古淵駅近くのショッピングセンターの店内。
わざわざ出かけるというより、地元の人が日常の買い物で訪れる場所だ。
店は入り口すぐにあり、施設内で最も目立つ場所にある。
以前もここで「サンマルクカフェ」が営業していたテナントで、今回はリニューアルしたかたちだ。
早速、店づくりを見ていこう。
同店のコンセプトは「日本とアジアの“お茶”の魅力を五感で楽しむ」。
ホームページによると「香り、味わい、心地よさを通じて、サンマルクカフェならではのお茶体験」を提案するという。
ちなみに名前が似ている「タリーズコーヒー&TEA」のコンセプトも「新しい紅茶体験を提供」すること。
「お茶の体験」が共通している。
しかし「サンマルクカフェ&茶」は「アジア」にフィーチャーしているのが特徴。
抹茶や台湾茶など、アジアのお茶に着目したことを他社との差別化ポイントにしているとのことだ。
それが色濃く表れているのが、同店限定ドリンクの数々。
アジアのお茶をベースにフルーツやタピオカを加えたアレンジドリンクが大きく打ち出されている。
多くは1杯690円〜720円。
同店のコーヒーのSサイズが320円であることを考えると高価格帯の商品だ。
限定ドリンク6品の中から筆者は「凍頂烏龍フルーツティー」720円をオーダーしてみた。
香りのいい凍頂烏龍茶にピンクグレープフルーツの果肉やゆずジャム、ナタデココが入ったさっぱりとしたドリンク。
デザート感がある1杯だ。
他の限定ドリンクには黒糖タピオカが入ったウーロン茶ミルクティーやほうじ茶ラテ、フルーツ系のジャスミンティーがある。
アジアンティーやタピオカなど、どことなく台湾茶ブランドの「ゴンチャ」を彷彿とさせる商品づくりだ。
「サンマルクカフェ&茶」では、コンセプトやドリンクは同業他社をかなり参考にしていると思われる。
ただ、フードはサンマルクの強みが生かされていると感じた。
同店限定のフード、「エッグタルト」と「プレミアムチョコクロ 紅茶ダマンド」を注文してみた。
「エッグタルト」は1個230円。
直径6センチほどのサイズで、小腹が空いたときや食事にプラスしてデザートにもぴったり。
エッグタルトは台湾や香港などアジアでも人気のスイーツだ。
サンマルクの代名詞「チョコクロ」の生地を使用しているだけあり、サクサクの食感がこの上ない。
中はカスタードクリーム、周辺には焦げた砂糖がカラメルのようになっていてまるでプリンのような味わいだ。
長年にわたりチョコクロを扱ってきたサンマルクカフェならではの仕上がりになっている。
こちらは「プレミアムチョコクロ 紅茶ダマンド」。
こちらは320円だ。
サンマルクの「チョコクロ」に茶葉を加えたアーモンドクリームを重ねて焼きこんだもの。
通常のサンマルクにも「プレミアムチョコクロ ダマンド」はあるが、茶葉入りなのは同店限定のようだ。
やはりサクサクの生地に、中にはチョコがとろり。
アーモンドクリームはそこまで茶葉の香りが強いわけではないが、いつものチョコクロよりも、よりリッチなデザートとして楽しめた。
これらの限定メニュー以外にも、普通のサンマルクカフェと同じメニューも一通りそろっている。
一部店舗のみで提供している抹茶系のスイーツもあり、これをオーダーしているお客も多かった。
空間も以前のサンマルクカフェから変化が見られる。
リニューアル前の店内の写真をネット上で探して見てみると、他の店舗同様、ダークトーンで落ち着いた空間だった。
ところが「サンマルクカフェ&茶」はクリーム色系の明るい雰囲気に一新されている。
コンセプトに合わせてアジアンテイストを取り入れているという。
さらに席配置にも大きな変化が。
以前は入り口すぐの外からよく見える場所には、一人客向けの席が並んでおり黙々と書き物やパソコン作業しているお客も多かった。
しかし、「サンマルクカフェ&茶」になってからは二人掛けテーブルに変わっていた。
そして、一人向けの席は店内奥へ追いやられていた。
ここに「サンマルクカフェ&茶」の狙いが隠れている。
「サンマルクカフェ&茶」では、限定ドリンクや凝ったデザートといった高単価商品を打ち出している。
そうした商品をテーブルでゆったり楽しむお客をメインターゲットにしているということだろう。
店の目立つ場所のテーブル席でおいしそうなドリンクやデザートを楽しんでいるお客を見たら、つい自分も食べたくなってしまいそう……。
あらゆるモノの値段が上がる中、飲食店はいかに満足度を落とさずに値上げを行うかに苦心している。
単に値段を上げるだけでは消費者から反発がある。
そこで、従来のサンマルクカフェを「サンマルクカフェ&茶」にアップデートし、魅力的な高単価ドリンクやデザートを用意することで納得しながら高い値段を払ってもらう狙いなのだろう。
コーヒー1杯で作業されるお客が多くなると、やはり店としては苦しいのが本音だ。
とはいえ、完全に一人客の作業席をなくさない点にもサンマルクカフェの矜持を感じる。
一人客の席は奥へと引っ込んだが、なくなってはいない。
以前と同様にコーヒー1杯の利用ももちろん可能だ。
電源もあるのでパソコン作業にも使うことができる。
元のお客も大切にしながら、新しい需要を取り込んでいく意向が見える。
今後もこの業態は既存店のリニューアルなどによって増やしたいとのことだ。
スターバックスやタリーズコーヒーのお茶の新業態も同様で、既存店にはない魅力的な商品を打ち出し、結果的に単価アップを図っている。
ただどちらかというと、この2ブランドのお茶新業態は店全体で新しい客層を取り込む意向が強く見える。
今年2月、銀座にオープンしたスターバックスのお茶新業態「スターバックス ティバーナ ストア 銀座マロニエ通り」は、限定ドリンク目当てにわざわざ訪れるお客が多く、日常使いされることも多い既存のスタバと異なるニーズのお客が大半を占めていた。
タリーズコーヒーの「タリーズコーヒー&TEA」も、既存のタリーズコーヒーの近くに店舗を出すケースも多く、既存店と異なる需要を取り込みに行っているのが見て取れる。
一方の「サンマルクカフェ&茶」には、1つの店舗内で既存客も大切にしながら新しい需要も取り込む、懐の深さがある。
参照元:Yahoo!ニュース