IAEA、イランから査察官全員引き揚げ 核計画の把握さらに困難に

イランによる国際的な監視活動の協力停止を受け、国際原子力機関(IAEA)は4日、同国に残っていた査察官を撤退させた。
IAEAの査察官がイランから完全に排除されるのは、20年前のウラン濃縮開始以来初めてで、核計画に対する透明性が一層失われる事態となった。
IAEAは同日に発表した声明で、全ての専門家がウィーンの本部に到着したと明らかにし、「イランとの協議を可能な限り早期に再開することが非常に重要だ」と強調した。
匿名を条件に語った欧米側の外交官によると、撤退は、イランで可決された新法により、国際的な核監視活動が刑事罰の対象となる恐れがあるためだという。
査察官の撤退は、欧米諸国からの強い反発を招きそうだ。
イスラエルが6月13日にイランの核施設や軍事拠点への空爆を決定したことで、IAEAの監視体制は事実上断絶され、イランの核兵器開発能力を巡る検証は不可能な状況に陥っている。
IAEAに認可された274人の査察官らは、これまで核弾頭10発分に相当するイラン国内の高濃縮ウラン409キログラムの所在を把握していたが、現在その保管場所は不明となっている。
イランは、高濃縮ウランの所在が不明という状況を、再攻撃への抑止力として利用したり、外交的な主導権を握る手段としたりする可能性がある。
米国とイスラエルがそのウランの状態と所在を把握するには、物理的な査察と検証が必要で、そのためにはIAEAのアクセスを再交渉する必要があるとみられている。
参照元:Yahoo!ニュース