生活保護の「引き下げ」で国が敗訴 問題の背景と今後の影響について

生活保護をイメージした写真

6月27日、2013年から行われた平均6.5%、最大10%もの史上最大の生活保護基準引き下げは違法であるとして、処分取り消しを認める最高裁判決が言い渡された。

2014年以降に最大時1027名の原告が全国で提訴した結果がようやく出た形だ。

背景として生活保護へのバッシングがあることや社会一般への影響が懸念されてきた。

最高裁判決を受け、厚労省は減額分の追加支給を検討しているとの報道も出たが、6月30日の厚労省への原告団の訪問時には、「謝罪の点なども含め、今回の判決内容を精査して対応していく」と述べるにとどめた。

2013年から生活保護が大幅に引き下げられた直接の要因は、2012年に当時は野党だった自民党が「生活保護給付水準の10%引き下げ」を政権公約に掲げ、実際に政権を獲得したことであった。

自民党は最低賃金や年金の水準が生活保護を下回っているとして、生活保護の方を引き下げるべきであると訴えた。

しかし、生活保護基準は日本で唯一、ナショナルミニマムの基準を定めるものであり、憲法25条で定める「健康で文化的な最低限度の生活」を具体的に保障している。

政府はこの「基準」の問題をワーキングプアや年金受給者との間の不公平感という「感情」の問題にすり替えてしまった。

さらに、生活保護はナショナルミニマムとして各種の社会保障制度と連動しており、生活保護受給者のみならず、広く一般市民の生活を守るために重要な判決となった。

生活保護は最低賃金、住民税非課税・減免、保育料減免、就学援助、奨学金・授業料減免など、実に40以上の制度に連動している。

今回の最高裁判決を受け、引き下げられた減額分の救済はどうなるのか。

さらに、日本社会に生きる人々の生存権が守られる方向に生活保護を含めた社会保障制度が変わっていくのか。

引き続き注視していく必要がある。

参照元:Yahoo!ニュース