朝、新聞を読んでいたら「頭がボコン」 激しい頭痛に見舞われ、ある日突然言葉を失った 「失語症」とは? 社会参加・支援の課題は

失語症をイメージした写真

ある日突然、話すことができなくなったらあなたはどうするだろうか?

病気や交通事故などが原因で、誰でもなる可能性がある「失語症」、当事者や家族を取り巻く環境を取材した。

「言葉はこんなに上手ではなかった。もやもやする…それに尽きるかな」

こう話してくれたのは、鳥取県米子市に住む足立卓司さん、51歳。

足立さんは2018年8月、脳出血が原因で失語症を発症し、右半身に麻痺が残った。

「朝起きて新聞読んどったら頭がズカンと、ここ(頭)がボコンと。頭がもうとにかく痛くて救急車を呼んで、そのあとはさっぱり」

「失語症」とは、脳梗塞や脳内出血などが原因で、脳の言葉をつかさどる部分が損傷することによって話す・聞く・読む・書くなどの機能に障害が出る言語障害の一種で、誰にでも発症する可能性がある。

厚生労働省の統計によると、失語症を発症する要因となる脳卒中などを含む脳血管疾患は、ガンや心疾患、老衰に次いで死亡原因の第4位。

失語症を発症した人は全国におよそ50万人いるという。

そんな失語症の患者と家族が交流できる米子市内のサロンをたずねてみた。

鳥取県失語症者支援センター 田村篤人さん「失語症になられると、どうしてもご自身1人で外出するっていうことに抵抗を持たれる方が多くて、家族に依存しまうってことが多くなってしまいます。やっぱりコミュニケーションが取れなくなったら人前に出るのが恥ずかしいと思われたり、怖いと思われたり、億劫と思われることが出てくると思います」

月に一度開かれてるこのサロンは、失語症の患者が社会に出るきっかけを作ったり、失語症の人を支援する意思疎通支援者と失語症患者をつなぐなどの役割を担っている。

利用者は「ちゃんと喋れる場所っていうのはこういうところしかないので、ありのまま喋れるし、普通の人の中でこんなことできんな。だけどここだったらできる」

利用者の妻「ほかの場所に行くよりもリラックスして自由奔放に、何しても笑われないし注意されないし、ここに来るとホッとするみたいです」

失語症の人たちがどのように社会参加していくかが課題となるなか、取り組みも進んでいる。

約8年前に失語症を発症した足立さんは、現在、障害や難病などにより一般企業での就労が難しい人が雇用契約を結ばずに働くことができる事業所「SOI STANCE」に通い、月曜・水曜は身体面のリハビリ、火曜・木曜・金曜は依頼されたものを作る作業を行っている。

この日は「SOI STANCE」のカフェで使う野菜を切る作業を行っていた。

足立卓司さん「まだ、その…体がここまで動かんくなっても、できることがあるのはうれしい」

SOI STANCE 小山雅之 副所長「働きたいという気持ちを持った利用者さんの支援ができるというところがいいところだと思っています。いろいろ抱えるものはあるんだけど仕事をしたことで自分のしたものが何か成果になるということを実感してもらってそれぞれの目標に向かって自分のできる範囲で頑張ってもらえたらと思っています」

鳥取県失語症者支援センター 田村篤人 センター長「どの病気であったり障害であったりとかもそうなんですけど、それが当たり前に社会の中にある社会になっていくのが1番理想かなと思います」

以前よりもうまく体を動かしたり話したりできなくなった自身の状況を理解し、前向きに社会とのかかわりを持ち続けている足立さん。

これからの目標を聞いてみると。

足立卓司さん「1人で…あの、えっと…言葉が足らんな…。お出かけとか(したい)」

外見からはなかなか気づくことができない失語症。

まずは私たち1人1人が失語症について知り、理解することが必要だ。

参照元:Yahoo!ニュース