熟年再婚で義理親子の「争続」が勃発 遺言トラブルで検認が増加

「寿命が長くなって、親が熟年再婚すると、子どもと再婚相手の間で相続トラブルに発展するケースが増えている」
こう語るのは「たった5日で相続対策」(ダイヤモンド社)などの著書がある税理士の板倉京さんだ。
板倉さん自身、義父の熟年再婚による相続トラブルを経験したことがある。
年金暮らしだった義父(夫の父親)は妻と死別後、首都圏で一人暮らしをしていたが、70歳の時、結婚相談所を通じて知り合った10歳年下の女性と再婚した。
女性には離婚経験があり、成人した実子もいた。
義父は、板倉さん夫妻に相談することなく再婚を決めた。
再婚を知ったのは、お正月に義父宅を訪れた時だという。
義父は、一軒家(3千万円相当)と金融資産約5千万円を持っていた。
もし義父が遺言書を残さずに亡くなった場合、再婚相手の女性には財産の半分を相続する権利が生じる。
女性には別の持ち家があったが、再婚を機にその家を賃貸に出していたため、義父の家に住み続けたいと主張する可能性があった。
再婚相手と板倉さんの夫には親子関係がないため、女性が義父宅の相続を選んだ場合、その家はいずれその実子のものになってしまう。
「義父が亡くなれば、相続でもめる」と直感した板倉さんは、夫と相談した上で、義父に遺言書を作成するようお願いした。
遺言書には、義父宅は板倉さんの夫が相続した上で、その他の財産は再婚相手と半分ずつ相続させると記された。
義父は再婚から数年後に脳梗塞(こうそく)で倒れ、入退院を繰り返し、80歳で亡くなった。
10年足らずの再婚生活だった。
板倉さんは義父の遺言通りに遺産分割しようとしたが、再婚相手は「遺言書は無効だ」と主張。
弁護士を雇い、義父の家に住み続けた。
亡くなった人が自筆で遺言書を残していた場合、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要がある。
発見者が勝手に内容を書き換えたり、破棄したりするトラブルを防ぐため、家裁に相続人が集まって内容を確認するものだ。
その検認作業が終わると家裁は「検認済証明書」を発行する。
板倉さんの義父の遺言書は「有効」とされ、再婚相手は金融資産と数千万円の生命保険を手にし、義父宅から出た。
その後、板倉さん一家とは音信不通になったという。
司法統計によると、家裁に申し立てられた遺言書の検認は、2020年は1万8277件、21年は1万9576件、22年は2万500件、23年は2万2314件と増加している。
子ども側から見ると、実家や金融資産は両親が何十年もかけて築き上げたもの。
しかし死別や熟年離婚などで一人になった親が再婚すると、数年一緒に暮らしただけの再婚相手に全財産の半分を持っていかれることもあり、争いになるケースが多いという。
板倉さんは「熟年再婚する場合、子どもと再婚相手が自分の遺産をどう相続するのか。元気なうちにそれぞれと話し合って決め、遺言書を作成しておくことをお勧めします」と助言する。
参照元:Yahoo!ニュース