関西で愛される「アイスキャンデー」の謎 なぜ棒は「斜め」に刺さっているのか
梅雨はいったいどこへやら。
18日は京都市で36度を記録するなど連日、暑い日が続いている。
そんな中、街で見られた光景が「アイス」を食べる人。
ところで、この「アイス」のことをなんと呼ぶのだろうか?
【岡山県出身】「アイスクリーム」
【静岡県出身】「しろくまアイスみたいな。アイスかなぁって思いました」
様々な答えが聞こえてくる中で関西の人は。
【兵庫県出身】「アイスキャンディ」
【大阪府出身】「北極のアイスキャンディ」
【大阪府出身】「アイスキャンデー」
なぜか関西人は「アイスキャンデー」にこだわりがあるようだ。
関西では定着しているアイスキャンデー。
どのように関西で広まったのか。
アイスキャンデーがなぜ関西で広まり、定着したのか。
謎を探るべく取材班がまず向かったのは、関西屈指のアイスキャンデーの老舗があるという神戸市長田区。
訪れたのは、「餅屋大西」。
店主の大西健一さん(64)は三代目で、祖父である先々代の源二郎さんが1937年にアイスキャンデーの店として創業した。
ことし創業から88年。
アイスキャンデー界の老舗中の老舗だ。
地元の人に長く愛されてきたその味。
【客】「暑いから早く食べたい」
【客】「やっぱ夏になると買いにきますね」
こちらの女性は愛犬と一緒に買いに来たようだ。
なんと!犬の方が食べている。
【犬の飼い主】「この子、大西のアイスが大好きで。こんなに減ってますでしょう」
ちょっと心配になるが、犬にとっても夏の楽しみとなっている大西のアイスキャンデー。
ちなみに健一さんの孫・奏汰くんもおじいちゃんのアイスキャンデーが大好きで、自由研究でお店の調査をした。
【奏汰くん】「大西のこと全然知らんから、知りたいなって思ったから自由研究した」
健一さんも思わず笑顔。ということは、大西のアイスキャンデーはこの先も「安泰」かと思いきや…
(Q:将来何なりたい?)
【奏汰くん】「歌手」
(Q:おじいちゃんのお店一緒にやりたいなとか?)
【奏汰くん】「いやない」
おどける健一さんは少し寂しく映るが、奏汰くんの自由研究をよく読むと気になる記述が。
【奏汰くんの自由研究より】「アイスの棒が斜めなのはなぜ?」
大西のアイスキャンデーは棒が斜めに刺さっている。
一体、何故なのか特別に製造過程を見せてもらうと、店主の大西さんからは次のような説明が。
【大西健一さん】「意図して斜めにしてるというわけでは…意図してじゃなくってもう必然というか、斜めになっちゃってるんです。液体の状態で棒を入れるので勝手に斜めになる」
驚くほどシンプルな理由だった。
そしてなぜ関西でアイスキャンデーが広まったのか聞いてみると。
【大西健一さん】「なんででしょうね。ただ何となく関西の方が手づくりのキャンデー多いような気がしますね。理由はちょっとわからないですけど」
老舗中の老舗でも「よくわからない」とのことだった。
次に向かったのは、関西人ならおなじみ、アイスキャンデーが“ある”あの場所!
大阪・ミナミにある「551の蓬莱」だ。
(Q:アイスキャンデーを販売したきっかけは?)
【株式会社蓬莱・橋詰夏美さん】「(ミナミの)商店街でアイスキャンデーを当時いくつかの店が販売していて、『いいな~』と思って販売させていただいたというところがスタート」
昔、この辺りではアイスキャンデーを売る店がたくさんあったそうだ。
(Q:なぜ関西はアイスキャンデーという名前が定着?)
【株式会社蓬莱・橋詰夏美さん】「なんででしょうね」
しかし、なぜ関西でアイスキャンデーという呼び方が定着したのかという疑問については、ここでも明確な答えは得られなかった。
(Q:今も残る昔からの店は?)
【株式会社蓬莱・橋詰夏美さん】「北極アイスキャンデーさん。弊社よりも早く販売したと」
蓬莱よりもアイスキャンデーの歴史が古い店があるとのこと。
何か手掛かりがあるかもしれない。
蓬莱よりもアイスキャンデーの歴史が古いという「北極」を訪ねてみると、店頭には「大阪名物アイスキャンデー」の文字が。
昭和20年の創業以来、長く愛され続けてきた関西の土産の定番「北極のアイスキャンデー」だ。
このアイスキャンデーも棒が「斜め」に刺さっている。
「北極のアイスキャンデー」を製造・販売するアークティックの久保田社長にアイスキャンデーの棒が「斜め」になっている理由を尋ねると…
【株式会社アークティック久保田光恵代表】「色々計算されたものですね。斜めにすることで2本一緒に抜ける」
実際にアイスキャンデーを作る様子。
確かに「斜め」だと作業の効率が良くみえる。
そして食べる側にとってもメリットがあるそうだ。
【株式会社アークティック久保田光恵代表】「まっすぐ食べるよりもこのまま食べていただける。食べやすさもございます」
北極の「斜め」は熟練の職人が手がけるこだわりの結晶だ。
さらに、この「斜め」こそが、関西にアイスキャンデーが定着した理由だという。
【株式会社アークティック久保田光恵代表】「ドライアイスを入れていろんな地方にお持ち帰りできるようにしたのが始まりだと思っています」
(Q:北極さんがアイスキャンデーを広めた?)
【株式会社アークティック久保田光恵代表】「そうだと思います。斜めにすることによって空間が大きくできるってこともありましたので」
斜めだと箱に詰めた時に棒が外を向くので、中心に大きなドライアイスの塊を入れることができる。
このおかげで長時間保冷することが可能となり、お土産の定番として関西で広く認知されるようになった。
(Q:アイスキャンデーの文化がここから始まったと言っても間違いではない?)
【株式会社アークティック久保田光恵代表】「そうですね」
斜めに刺さった棒の工夫が、関西の夏の風物詩として多くの人に愛されている。
暑い夏、斜めに刺さった棒のアイスキャンデーを食べてみてはいかがだろうか。
参照元:Yahoo!ニュース