熱中症対策で“スポドリ飲み過ぎ”昏睡!? 水分補給時に陥りやすい「ペットボトル症候群」の危険性とは

気温の上昇とともに、スポーツドリンクや冷たいジュースを飲む機会が増えた人は多いと思う。
スポーツドリンクの適度な摂取は熱中症予防に効果的とされている。
一方、これらの飲み物を飲み過ぎると、血糖値が急激に上がり、喉の渇きや倦怠(けんたい)感などの症状を引き起こす、いわゆる「ペットボトル症候群」になることがあり、注意が必要だ。
ペットボトル症候群の危険性や予防法などについて、林外科・内科クリニック(福岡県宗像市)理事長で医師の林裕章さんに聞いた。
Q.そもそも、ペットボトル症候群とはどのような病気なのでしょうか。主な症状や放置するリスクも含めて、教えてください。
林さん:ペットボトル症候群とは、正式には『清涼飲料水ケトーシス』と呼ばれており、ジュースやスポーツドリンクなどの甘い飲み物を大量に飲み続けることで急激に血糖値が上昇し、重篤な高血糖状態になる病気のことです。
特に糖尿病であるにもかかわらず、まだ自覚していない人や、糖尿病なのに診断を受けていない人に起きやすく、急性の『糖尿病性ケトアシドーシス』に似た状態になることもあります。
糖尿病性ケトアシドーシスとは、『高血糖による脱水と循環不全』『脂肪の代謝産物であるケトン体による血液の酸性化』『電解質のバランス崩壊』が複合して起こり、全身の臓器機能障害を引き起こす状態のことを指します。
適切に治療しなければ生命に危険を及ぼします。ペットボトル症候群の主な症状は次の通りです
【ペットボトル症候群の主な症状】
・異常なほどの喉の渇き
・頻繁にトイレに行く(多尿)
・体がだるくなり、疲れやすくなる
・頭痛
・吐き気
・重症化すると意識がもうろうとしたり、脱水症状が生じたりする。意識障害から脳ヘルニアなどを発症し、死亡する例もある
先述の話と重なりますが、ペットボトル症候群を放置すると血糖値の異常な高さが続き、体内の酸性度が上がるケトアシドーシスという危険な状態になります。
場合によっては昏睡(こんすい)状態に陥るなど、生命に関わることがあります。
また脱水や電解質異常も重篤化を招き、緊急の医療処置が必要になることが多いです。
Q.ペットボトル症候群を防ぐには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
林さん「予防のポイントは次の4点です」
■甘い飲み物の過剰摂取を控える
ペットボトル症候群の最大の原因は、糖分を多く含む飲料を大量に飲むことです。
糖分を多く含むジュースやスポーツドリンクの摂取量を適度に抑えましょう。
■規則正しい食事と適度な運動を心掛ける
糖尿病予防のためにバランスの良い食事と定期的な運動を習慣化することが大切です。
■体調の変化に敏感になる
「喉が異常に渇く」「尿の回数が増える」「体がだるい」などの症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
■定期的な健康診断で血糖値をチェックする
特に40歳以上の人や肥満の人、家族に糖尿病患者がいる人は定期的に血糖値を測り、糖尿病の早期発見、早期治療を目指しましょう。
ジュースやスポーツドリンクを飲んで何らかの症状が出た場合は、まずは甘い飲み物を控え、できるだけ水や無糖のお茶で水分補給をしましょう。
症状が続く場合や症状が悪化した場合は、速やかに医療機関を受診し、血液検査や必要な治療を受けてください。
放置すると重篤な合併症を招く恐れがあります。
Q.水分補給時はどのような飲み物を摂取するとよいのでしょうか。ポイントについて、教えてください。
林さん「水分補給時は次の3つのポイントを意識しましょう」
■無糖の水やお茶を選ぶ
水分補給時は、水や麦茶、ほうじ茶などの無糖の飲み物が最も安全で適しています。
カロリーや糖分を含まないため、血糖値に影響を与えません。
■スポーツドリンクは適量を守る
スポーツドリンクは汗で失われた電解質を補給する目的で作られていますが、糖分が多く含まれているため、長時間にわたって大量に飲むのは避けましょう。
特に血糖値が高い人や肥満の人など、糖尿病の発症リスクがある人は注意が必要です。
■ジュースは控える
砂糖入りの炭酸飲料などの甘いジュースは血糖値を急激に上げるため、水分補給には適しません。
繰り返しにはなりますが、ペットボトル症候群とは甘い飲み物の過剰摂取によって引き起こされる急性の高血糖状態で、適切に対処しないと命に関わることもあります。
水分補給時は無糖の飲み物を選ぶようにし、糖分が多い飲料を控えることが大切です。
また、体調の異変に気付いたら早めに医療機関を受診しましょう。
参照元:Yahoo!ニュース