熱中症から命守る「乙葉リーフレット」 「自慢の娘」の名を刻んだ予防ポイント集、両親が作成

2023年夏、山形県米沢市で部活動からの帰宅途中に熱中症で倒れて亡くなった女子中学生(当時13歳)の両親が、同じ悲劇が二度と起こらないよう熱中症予防のポイントをまとめた小中学生向けの手引を市教育委員会と作成した。
「娘のことを忘れないで」との願いも込め、15回目の誕生日にあたる15日に発行する。
亡くなったのは市立第三中1年だった島扇乙葉さん。
同年7月28日午前、夏休みの剣道部の練習を終え、自転車で帰宅途中に倒れた。
通行人が119番したが、熱中症から多臓器不全などを引き起こし、搬送先の病院で息を引き取った。
搬送時の気温は32.6度。
学校は暑さ対策で、練習中は20~25分ごとに休憩を挟み、予定より約1時間早く切り上げていた。
3姉妹の長女の乙葉さんは、優しい性格で妹の面倒見も良く、中学では学級委員を務め、剣道部の先輩たちに追いつこうと練習に励んでいた。
「自慢の娘だった。夢と希望でいっぱいの乙葉は、キラキラしていて、私たちも幸せだった。これから成長していく姿を見るのが楽しみだったのに……」。
父親の直人さん(41)と母親の郁美さん(39)は、今も無念の思いを抱える。
乙葉さんの事故を受け、市は24年、顔の表情などから熱中症のリスクを判定するAIカメラを市内の全中学校に導入。
県も猛暑が予想される7~9月は運動会などの開催を控えるように学校現場に通知してきた。
両親が熱中症対策の手引を作ったのは、さいたま市教委が作った救命処置の手引「ASUKAモデル」の存在を知ったからだ。
11年に市内の小学校で桐田明日香さん(当時11歳)が、駅伝の練習直後に倒れ、AED(自動体外式除細動器)が使われることなく亡くなった事故を教訓に作られたものだった。
「熱中症で命を落とす子供をなくしたい」と米沢市教委に働きかけ、▽こまめな水分補給▽首やわきの下を冷たいタオルや氷で冷やす▽体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」を進める――などの予防法をわかりやすくまとめた。
手引のタイトルは「乙葉リーフレット」。
これまで公表していなかった娘の名前を入れた。
市教委は8000部を発行し、順次、市内の小中学校で配布する。
郁美さんは「手にした人が乙葉にも思いをはせ、熱中症対策をしてくれたら」と願っている。
参照元:Yahoo!ニュース