3歳以下の死亡事故「発進時」74%、死角に子ども 幼児検知できる装置設置を義務化へ

車の発進時に死角に入った幼児がはねられる事故が相次いでいる。
島根県では2日、1歳の男児が死亡する事故が起きた。
背の低い幼児は車の運転席から見えにくく、低速でも被害が深刻化しやすい。
ミニバンやワンボックスカーなど車高が高く、死角が生じやすい車種が普及し、国は検知装置の導入を進めているが、専門家は目視による確認の徹底も呼びかけている。
島根県出雲市の保育園の駐車場で2日朝、この園に通う男児(1)がミニバンにはねられ、搬送先の病院で死亡が確認された。
県警によると、自動車運転死傷行為処罰法違反容疑で現行犯逮捕された別の園児の母親(39)は自身の子どもを園に預けて勤務先に向かう途中だったといい、調べに「車を発進させる際にはねた」と供述した。
男児は保護者の車で駐車場に到着後、一人で歩いていたという。
昨年4月には、北海道岩見沢市の市道で3歳の女児がワンボックスカーにはねられて死亡した。
道警によると、運転手が車を発進させた際、巻き込まれたとみられる。
公益財団法人「交通事故総合分析センター」(東京)が2011~20年に起きた時速1キ0ロ以下の車と歩行者の事故を分析すると、3歳以下の歩行者が死亡した割合は3.2%で、4~64歳(0.1~0.5%)を大きく上回った。
車が3歳以下の幼児を死亡させた事故68件のうち、74%は発進時で、右左折(19%)、後退(6%)が続いた。
被害場所は自宅の50メートル以内が46%に上り、自宅から離れた場所では駐車場が目立った。
車種別では車高の高いミニバン(30%)とワンボックス(22%)で半数以上を占めた。
幼児の見落とし事故を防ぐため、国土交通省は23年6月、車の装備などを規定する保安基準を改正し、車の正面や両側面にいる幼児を検知できる装置の設置をメーカーに義務付けることを決めた。
今後、義務化の時期を検討する。
保安基準は、車の正面と左右側面に幼児を想定したポールを置き、運転席から視認できない場合、メーカーに鏡やカメラモニター、ソナーなどの検知システムを設置することを求めている。
車の安全装置を巡っては、後退時に後方が映像で確認できる「バックカメラ」の搭載が24年11月に全車種で義務化された。
国交省自動車局の担当者は「技術の進歩に応じて基準を随時見直し、事故の犠牲者を減らしたい」と語る。
再発防止に取り組む自治体もある。
京都府京田辺市の市立こども園駐車場で3月、通園中の3歳男児が軽トラックにはねられて負傷する事故があり、市は再発防止のため、駐車場の脇を緑色に塗って歩道として目立たせる「グリーンベルト」を設けた。
三男(5)がこの園に通う同市のパート女性(42)は「どこを歩けばよいか一目でわかるので安心」と話す。
子どもの事故対策に詳しい東洋大の内山有子教授(小児保健学)の話「幼児は自分で歩ける上に好奇心も旺盛。さらに大人に比べて視野が狭く、横から来る車も見えにくい。運転手は死角に子どもがいるかもしれないと考える習慣を付け、子どもが飛び出してきそうな場所ではより慎重な運転を心がけるべきだ。保護者も駐車場では短時間でも一人にさせず、遊ばせないようにするなど注意が必要だ」
参照元:Yahoo!ニュース