健康にも財布にもやさしい「油少なめ揚げ焼き」人気調理法だが短時間で発火の危険 ことし学生街で火事急増

油を使用して調理している人

京都市で揚げ物油による火災が急増している。

その背景には今“はやりの調理法”があるという。

京都市消防局全面協力の実験で、便利な調理法の思わぬ落とし穴が見えてきた。

大阪市内に住む伊藤さん一家。

夕飯の準備を手伝う子供たちが心待ちにしているのは、から揚げだ。

「いただきます!おいしい!めっちゃおいしい!」

子供たちの大好物で、みんなおかわりしますが、親にとっては、「揚げ物」のハードルは高いそうだ。

【伊藤真衣さん】「全然しないですね。絶対(油が)跳ねるから、掃除したくないのが一番。なるべく油使いたくない」

そんな伊藤さんの揚げ物の作り方は…。

【伊藤真衣さん】「“揚げ焼き”でから揚げを作る。(サラダ油を入れながら)いつももっと少ないかも。全然使わないですね」

「油少なめ」で調理をする“揚げ焼き”。

伊藤さんに限らず、いまネット上のレシピでは、「揚げ焼き」など「油少なめ」の調理が大人気。

フライパンに5ミリほどの油で揚げたハッシュドポテトなど、多くのレシピが公開されています。

街の人に聞いてみると…。

(Q.油は少なめ?)

【街の人】「(少なめに)してます。そのほうが早く揚がる。捨てる油がなくて、もったいなくない」

【街の人】「すごい少量でやってます。半身浴くらい。飛び散ったりとか、周りのキッチン片付けるのもめんどくさい」

また、弁当用のレシピ本などが話題の料理家「まるみキッチン」さんは、人気の理由は他にもあると考えているそうだ。

【料理家 まるみキッチンさん】「最近、食材がなんでも高騰する中で、サラダ油も値段が上がってきているので、食材費を抑えられることもメリット。揚げ焼きはバズりやすいテーマです。極力、揚げ焼きできるものは、揚げ焼きするようにしています」

米価格高騰のかげに隠れがちだが、「油」も高騰が止まらない商品の1つだ。

日清オイリオなど大手メーカーの商品も、ことしに入り7%以上の値上げを実施した。(Jオイルミルズ:ことし5月から7~15%値上げ、日清オイリオ:ことし4月から7~11%値上げ)

【フレッシュマーケットアオイ 内田寿仁社長】「メーカーさまが値上げすると、私たちの仕入れ値も上がるし、すごく心苦しい」

手軽さに、物価高などさまざまな理由で、広がりをみせる「油少なめ」調理。

しかし、この状況に「待った」をかけるのが京都市消防局だ。

【京都市消防局 山田正人予防課長】「(ことしに入って)天ぷら鍋火災については12件。まだ半年たってないにかかわらず、昨年の9件を上回っている状況」

ことしに入って、京都市内で「揚げ物火災」が急増。

その背景にあるのが、「油少なめ」の調理だというのです。

一体どういうことなのか。

取材班は、京都市消防局「全面協力」のもと、実験を行った。

まずは「十分な量」といえる、500ミリリットルの油を鍋に入れて、火をつける。

【記者リポート】「火をつけてから10分で煙の勢いが強くなってきた」

そして、火をつけてから12分後に、炎が上がった。

360度を超えると、発火すると言われる「油」。

油の量を500ミリリットルから、100ミリリットルに減らすと、どうなるのでしょうか?

火をつけてから3分で早くも煙が上がり、そしてボワッ!

【記者リポート】「あ、今炎が上がりました」

なんと、500ミリリットルのときより早い、わずか5分。

油を少なくすると温度が上がりやすく、発火するまでの時間が短くなる。

この「発火までの時間」の違いが、「油少なめ」による火事を招いているようだ。

一度燃えれば、そう簡単に消えることがないのが、「揚げ物油」火災の恐ろしさ。

消火方法についても聞いてみた。

【京都市消防局 中川正宗調査鑑識係長】「まず最初にコンロの火を必ず止めてください。台所にある、お鍋のふたや濡れ布巾で鍋を覆って窒息させます」

しかし…。

【京都市消防局 中川正宗調査鑑識係長】「消えたと思って、ふたを開けると、また再び火が入ってしまう」

【京都市消防局 中川正宗調査鑑識係長】「鍋をふたすることによって、空気が遮断されて窒息消火されるけれど、油の発火温度=360度には達したまま。しっかりふたして、すぐ開けず、時間をおいてしばらく待つということが大事」

参照元:Yahoo!ニュース