またラーメン店で「鶏レアチャーシュー」食中毒 ラーメン店で相次ぐ「カンピロバクター食中毒」を防ぐには

食中毒をイメージした画像

神戸市は2025年6月7日、市内中央区のラーメン店で食中毒が起き、3日間の営業停止を命じたと発表した(神戸市ホームページ)。

それによれば、主な喫食内容として「加熱不十分な鶏チャーシューがのった鴨出汁ラーメン、貝出汁ラーメン」とされており、原因は加熱が十分ではない鶏肉であり、カンピロバクターの可能性が極めて高い。

またラーメン店で食中毒が起こってしまった。

そしてまたカンピロバクターである。

1983年に新たな食中毒菌として指定されたカンピロバクターは、厚生労働省によれば2024年の発生件数が1,141件もあり、近年では細菌性食中毒の原因として最も多く発生している。

鶏、牛等の家禽や家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌している。

カンピロバクター食中毒では、原因となるものを食べてから約2~5日で、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの重篤な症状を起こす。

一般的には食中毒の症状が出てもその多くは自然に回復するが、特に小さい子どもや高齢者では脱水で重症になることもある。

さらにギラン・バレー症候群の約40%がカンピロバクター感染症が原因となっており、麻痺性疾患との関連も看過出来ない極めて重要な病原菌と言えるだろう。

ラーメン店でも過去に加熱が十分でない鶏チャーシューによる食中毒事案が何度も起こっている。

今から3年前の2022年6月にも、愛媛県松山市のラーメン店でカンピロバクター食中毒が発生。

この時期、松山市では他の複数店舗でも同様の事案が続発しており、県と市は「カンピロバクター食中毒注意報」を発令したほどだった。

しっかりと加熱してあれば防げる食中毒がある。

なぜラーメン店でカンピロバクターの食中毒が絶えないのか。

厳しい言い方をするならば、食材の扱いにおける正しい知識や技術を持っていないラーメン店主や、衛生管理意識の低いラーメン店主が一定数いるからだ。

今回の事故もカンピロバクターの知識を持っていれば十分防げた可能性が高いと言わざるを得ない。

もちろんどれだけ知識があっても、最善の注意を払っても起こってしまう食中毒はある。

しかしながら、カンピロバクターの食中毒は、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防ぐことができる。

食中毒予防の原則は「菌を食材につけないようにする」「菌を増やさないようにする」「菌を殺す」という3原則だが、これは飲食店側の予防措置であり、私たち消費者側はコントロール出来ない。

私たちが出来ることは「リスクの高い店に行かない」ことと「リスクの高い食材を回避する」ことの2点。

これでカンピロバクターでの食中毒への罹患率は圧倒的に低くなる。

「リスクの高い店」とは、食中毒に対する意識が低い店や、衛生管理が行き届いていない店、アルバイトが調理しているような店などを意味する。

そういう店でリスクの高い料理を食べるよりも、作り手の顔がしっかりと見える、信頼のおける料理人が厨房に立つ店で食べる方がリスクは低い。

そして「リスクの高い食材を回避する」。

カンピロバクターの主な生息場所は「ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハトなどの動物の消化管内」。

つまり、しっかりと加熱されていない肉などを食べなければ良いということだ。

そして、この中で私たちが食べる可能性が特に高いのは牛、豚、そして鶏だろう。

牛肉、豚肉に関しては厚生労働省から生食の禁止が通達されているので、特に気をつけるべき食材は鶏肉だ。

食文化として鶏を生で食べる地域もある。

鶏はそもそもカンピロバクター菌を保有している率が極めて高い動物だ。

もちろん生息しているのは鶏の腸管内なのだが、食肉処理の際に腸管が破れるなどして鶏肉部分にも付着し、中でも内臓肉を汚染しやすい。

流通している鶏肉の2割〜8割にカンピロバクター菌が付着していたという調査もある。

鹿児島など鶏肉を生やタタキで喫食する食文化を持つ地域では、安全に鶏を食べるために他県とは異なる独自のガイドラインを制定している。

それは古くから続く食文化を安全に守っていきたいという思いの現れであり、果たしてそれと同様かそれ以上の高い意識を持ってラーメン店がレアチャーシューと向き合っているかは疑問だ。

今までにないアプローチでラーメンを表現することは、ラーメン文化の発展の意味からも良いことだが、あくまでも健康被害が起きない安全な料理であることが前提だ。

現段階において鶏肉のレアチャーシューにはリスクしかない。

それを理解しているラーメン店ではそんなものは出さない。

鶏のレアチャーシューを出しているのは、食材の知識に乏しく衛生管理意識の低い店なのだ。

そしてこれは同時に食べ手である客にも言えること。

鶏肉の生食におけるリスクを知っていれば、今回のようなラーメンは食べないはずだ。

中には「飲食店が出しているものだから安全だと思った」という意見もあるが、それはあまりにも飲食店を過信し過ぎている。

残念ながら飲食店であってもそのような知識や技術に乏しい店がある。

だからこそリスクの低い飲食店を選ぶべきなのだ。

繰り返すがカンピロバクターによる食中毒は死に至ることもあり、非常に危険で怖い。

しかし、正しい知識を持っていればそのリスクを下げることが出来る。

作り手はもちろんだが、食べ手である私たちもしっかりと理解して自衛していく必要がある。

牛、豚、鶏など家畜や家禽の内臓肉は極力避ける。

家畜や家禽の内臓肉を食べる場合は、しっかりと加熱されたものを食べる。

現段階で規制のない「鶏肉」の生食は極力避ける。

特に「鶏レバー」の生食は絶対に避ける。

信頼の出来る飲食店で食べるようにする。

これらのリスクを知らないで食べて、食中毒になってしまうのは実に不幸なことだ。

正しい知識を持って食中毒のリスクを回避して頂きたいと切に願う。

参照元:Yahoo!ニュース