韓国コスメ、トランプ関税の壁越え米で実店舗販売拡大 韓流人気が追い風

化粧品やスキンケア用品を手がける韓国のスタートアップ企業は米国事業拡大に動きつつある。
オンライン販売の成功で自信をつかみ、実店舗での販売に手を広げる方針で、大衆的な人気を武器にトランプ米政権の関税措置に伴う逆風を克服できると期待している。
「ティルティル」「ダルバ」「トリデン」「ビューティー・オブ・ジョセン」などのブランドは現在、米国の主要小売り事業者との間で店舗販売に向けて協議中と各社幹部がロイターに明かした。
いわゆる「韓国コスメ(Kビューティー)」商品は品質、価格、洒落た広告などの点で国際競争力を備えている上、音楽や映画、テレビ番組など韓国文化の人気もプラスに働いている。
ティルティルのアン・ビュンジュン最高経営責任者(CEO)は「(Kポップの)BTS、韓国ドラマや『パラサイト』などの映画作品に代表される韓国文化が道を開いてくれた」と話す。
アン氏は「米国市場では既に韓国への関心が高まっており、そこに韓国コスメが参入した。
品質が良いだけでなく、価格はロレアルやエスティー・ローダーといった既存の高級ブランドに比べると安い」と強調した。
ティルティルが一躍有名になったのは昨年、インターネットでの口コミを通じて暗い色の肌用のクッションファンデーションのオンライン販売が急増したためだ。
アン氏は、この夏に米最大の美容小売りチェーン、アルタ・ビューティーの一部店舗でこの商品を販売するとロイターに説明し、今年の米国での売上高倍増を狙っていると付け加えた。
ロイターが業界の幹部や専門家など十数人に取材したところ、セフォラやアルタ・ビューティーからコストコ 、ターゲットまで米国内のさまざまな小売り事業者が韓国コスメのブランドと店舗販売開始に向けた話し合いをしていることが分かった。
韓国のコスメブランドは利益率が相対的に高い事業モデルなので、他国よりも関税の発動に伴う厳しい状況をしのぎやすいともみられている。
多くの企業は生産を外部に委託し、コスト抑制に取り組んでいる。
世界の国別化粧品輸出高では昨年、韓国がドイツを抜いてフランスと米国に次ぐ第3位に躍り出た。
韓国の化粧品生産130億ドル相当の8割は輸出用で、これまでのところは電子商取引(EC)経由が大半を占める。
米国から韓国の首都ソウルを訪れていた25歳の女性は、BTSのファンであり、BTSの影響で韓国コスメ商品への興味が強まったと明かす。
韓国最大級の化粧品店チェーン、オリーブ・ヤングの店内で「韓国コスメは整える必要がある部分や肌に的確な効果をもたらしてくれる」と話した。
トランプ政権の関税は韓国コスメの対米輸出に不確実性を生み出しているものの、力強い需要が悪影響を和らげてくれるだろう、と複数の企業幹部は口をそろえる。
オリーブ・ヤングのグローバル・プラットフォーム事業担当エグゼクティブバイスプレジデント、ジン・セフン氏は、早ければ年内にもロサンゼルスに米国1号店を開設する計画だとロイターに語った。
ジン氏は「米国、特にカリフォルニア州は当社のグローバル・オンライン購入プラットフォームにとって圧倒的に最大の顧客基盤となっている」と説明した。
同氏によると、米国の関税は重荷だが、韓国コスメの人気や値ごろ感に水を差すほどではない。
現時点で韓国コスメにとって最大の輸出市場は中国だが、中国と韓国の外交関係悪化や競争激化などにより対中輸出は減少気味で、海外事業の勢いを保つ上でも米国で足場を拡大しようとしている面もある。
低刺激性スキンケア用品ブランドのダルバは、コストコやアルタ・ビューティー、ターゲットと販売契約交渉を進めていると表明した。
フランスのLVMH傘下の化粧品チェーン、セフォラの広報担当者は、この夏にトリデン、ビューティー・オブ・ジョセンという2種類の韓国コスメブランドの取り扱いを始めるとしている。
ティルティルのアンCEOは、既に米国が課している10%の一律関税は「耐えられる」と述べた。
ただ7月以降に韓国への相互関税が上乗せ分を含めて25%になれば「多少は」商品の値上げを強いられるかもしれないという。
昨年の米国向け国別化粧品輸出で、韓国はフランスをしのいで首位の座を獲得。主導したのはアマゾン・ドット・コムを通じたオンライン販売だった。
米国のEC市場で売上高トップ5を占める韓国コスメブランドの過去2年間の平均成長率は71%と、市場全体の21%を大きく上回っていることがユーロモニターのデータから分かる。
フランスのコスメブランドのトップ5勢の成長率は15%にとどまっている。
韓国コスメの成功にはソーシャルメディアが大きな役割を果たした。
ソウルに拠点を置く美容マーケターは「今はたった1つのTikTok(ティックトック)の動画やインフルエンサーの推奨コメントで、韓国国外ではまだ販売していない段階でも世界的人気商品になれてしまう」と強調する。
ただ化粧品流通業者シリコン2のジェーソン・キムCEOは、より長期的な成功という観点では、実店舗販売を伸ばす必要があるとの見方を示した。
参照元:REUTERS(ロイター)