「ノッティングヘルだ」 カラフルな家を黒く塗る住民 ロンドン

カラフルな家並みが名物で、大ヒット映画のロケ地としても知られるロンドン西部ノッティングヒル地区で、住民が自宅の外壁を黒く塗り潰す動きが出ている。
家の写真を撮影する観光客らによる、ごみの放置やマナー違反などのオーバーツーリズム(観光公害)が起きているためだ。
「まるでテーマパークに住んでいるかのようです。私たちはノッティング『ヘル』(地獄)と呼んでいます」
同地区のランカスター通りに住む73歳の女性は、英紙タイムズにそう嘆いた。
この通りは外壁が青やピンク、緑などに塗られたビクトリア様式のテラスハウスが並ぶ。
ストリートマーケットが人気で、映画「ノッティングヒルの恋人」(1999年)の撮影があったポートベロー通りが近いこともあり、平日でも観光客でにぎわう。
若い女性らがカラフルな家々をバックに写真撮影に興じる姿がよく見られ、中にはスーツケースで何着もの衣装を持参し、テントを張って着替える人までいるという。
多くはインスタグラムやTikTok(ティックトック)といった交流サイト(SNS)への投稿が目的だとみられる。
そうした人々が私有地である玄関前の階段に上って写真を撮ったり、ごみを捨てたりするケースが後を絶たない。
階段への侵入を防ぐため玄関先にベルトや鎖が掛けられた家が少なくないほか、「静かにお願いします」などと近所への配慮を求める看板も設置されている。
だが、状況はあまり改善されていないとみられる。
英メディアによると、数カ月前から、外壁を黒く塗り替えるという大胆な「対策」が始まった。
壁を塗り替えた住民は他の住民にも同様の塗装を呼びかけ、次のような手紙を配っているという。
「明るく対照的な家の色が、ソーシャルメディア用の写真にとって非常に魅力的なのは明らかです。私たちは皆、この通りの魅力を大切に思っていますが、思いがけない影響として、迷惑な観光客が急増しているのです」
オーバーツーリズムは欧州各地のほか、日本でも問題になっている。
山梨県富士河口湖町は2024年5月、富士山の撮影スポットとして外国人観光客が押し寄せていた場所に黒い幕を設置し、人気の構図で撮れないようにする異例の措置をとった。
参照元:Yahoo!ニュース