かつて”タブー”とされていた「PTA解散」が増加している背景は? 親主体で新たな組織をつくる動きも

小学校のPTA役員をイメージした画像

小学校のPTAに改革の波が押し寄せている。

学校運営の「お手伝い」としての役割を減らし、保護者立案のイベントに力を入れるようになったところもあれば、思い切って「解散」に踏み切るケースも。

背景には何があるのか?

また、PTAを解散して学校や保護者、子どもたちが困ることはないのか?

PTA問題に詳しい大塚玲子さんにお話を聞いた。

――大塚さんは著書のなかで、PTA解散について書かれています。いつごろからそのような流れになってきているのでしょうか?

長い間、「PTA解散」はタブーな言葉でした。でも解散ができない団体は、維持することが目的化して、どうしても強制につながってしまいます。

そこでタブーを破るため書籍で取り上げようと思い、2020年にPTAの解散事例を探したのですが、このときは全く見つからず、「P連」(PTA連絡協議会)を抜けた学校を、他校が「解散」と呼んでいる例が見つかったくらいでした。

PTA解散について書いたその本が刊行されたのが2021年の秋。年末ごろ、地方でPTAが解散したというニュースを見かけ、その後、少しずつ解散するPTAの報道が増え、25年度のいま現在、もうそれほど珍しくないレベルになりました。

――なぜ、近年急激にPTAの解散が増えたのでしょう?

やはり新型コロナウイルスの影響が大きかったと思います。保護者の多くが「PTAのあり方が時代に合ってないよな……」と感じていたところに、コロナ禍があった。人と会うことが制限されましたから、多くのPTA活動が休止になりました。いざ、休止してみると、「意外とPTA活動がなくても大丈夫」と実感する人が多かったのでしょう。

同時に、学校の「働き方改革」の重要性も知られるようになり、先生たちも現状のPTAを維持する負担を考え始めたのだと思います。PTAを退会する先生の存在も知られるようになり、PTAの存在意義を見直す保護者も増えてきたのでは。

――PTAは、あくまで「任意団体」で、入会も義務ではないのですものね。

ええ。コロナ禍でPTAがなくても学校運営は回るということが判明し、PTAを続けるために払ってきた時間・労力的コストの大きさに、学校も保護者も気づいたのだと思います。

同時に、PTA活動が2~3年休止したことで、役員の引き継ぎがますます困難になりました。

以前はイベントや会合の際に、「あの人なら引き受けてくれるのでは」という目星をつけ、声をかける機会があったところ、コロナ禍でそうしたチャンスが減ったりなくなったりして、後任者を見つけるのがさらに難しくなった。そのような流れで「解散」に向かうケースが増えたのもあると思います。

――PTAがない場合、学校運営はどうなるのでしょう?

解散後は様々なパターンが見られます。PTAと似たような会が作られるところもあれば、「学校サポーター」と呼ばれる保護者の会を学校が主導して作るところもあります。

一方、保護者が主体となって、新しい組織を作り上げる動きもみられます。

たとえば兵庫県川西市では、PTAを解散して「ココスク」という保護者組織が複数校で立ち上がりました。強制せず、必要に応じて人やお金を募り、ゆるやかに活動をしていたところ、保護者のなかから「こんな活動をやってみたい」という相談もあがるようになったそうです。「不登校の保護者のおしゃべり会」を始めた、という話も聞きました。

――学校に頼まれたことを手伝うのとは異なり、楽しそうですね。

ただ、PTAは自治会や校区の他校PTA、教育委員会など学校の外の団体との関係もあるので、大幅な見直しをしづらい場合もあります。あまりつらい思いをしてまで改革するのはおすすめしませんが、仲間といっしょに面白がってやれるのであれば、ぜひ応援したいですね。

いずれにしても、学校から求められる「仕事」をすることばかり考えなくていい。既存のPTAのあり方にとらわれず、まっさらな状態で、どんなネットワークや活動があれば自分も参加したいかを考えて、自由に発想してもらえたらと願います。

「子どもたちのため」というと、保護者はつい自分を犠牲にしがちですが、保護者自身も楽しめる活動を考えていいんじゃないでしょうか。

参照元:Yahoo!ニュース