能登の被災建物に石綿、ボランティア活動に制限 4万棟を公費解体のなか健康被害の恐れ「対策を」

石綿を撮影した画像

能登半島地震と豪雨災害に見舞われた石川県能登地方で、被災した複数の建物から露出しているアスベスト(石綿)が見つかり、ボランティア活動が制限されるなどの影響が出ている。

約4万棟の公費解体が進むなか、健康被害の恐れもあり、専門家は「対策の徹底や正しい知識を身に付けることが重要」と指摘する。

昨年9月の豪雨で土砂が流れ込んだ珠洲市真浦町の旅館「ホテル海楽荘」(休業中)で4月中旬、天井や梁(はり)から石綿が確認された。

直径3~10センチほどの石綿の塊が5、6個はがれ落ち、毒性の強い「青石綿」と判明した。

県は旅館所有者に対し、飛散防止措置やボランティアの受け入れ中止などを要請。

旅館の入り口は「関係者以外立ち入り禁止」と貼り紙がされ、出入りできないように木材で塞がれた。

旅館内には今も土砂が残り、泥かきなどにボランティアの協力が必要だ。

経営者の女性(69)は「1人では片付けが進まない」と嘆くが、石綿が見つかったことに「手伝ってくれたボランティアの人たちには申し訳ない」と気をもむ。

国や専門家は、調査や啓発を続けている。

環境省は昨年2~3月、6市町で被災した建物を対象に石綿の調査を実施。

64棟中12棟で露出した石綿を確認し、所有者に飛散防止の措置などを取るように指導した。

NPO法人「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都)の永倉冬史事務局長、熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)ら調査チームも今月6日、七尾市と輪島市で調べた。

七尾市では公費解体予定の建物で露出した石綿が確認され、ブルーシートで覆うなどの措置を講じるよう県に要請した。

市内のボランティア拠点では、石綿への注意を示した冊子も配った。

中地教授は「解体工事が進むほど健康被害のリスクは高まる」と指摘する。

県によると、公費解体は4月末現在、2万6000棟ほどで完了。

さらに約1万4000棟の解体が10月までに予定され、県は防じんマスク着用などの対策を解体業者に呼びかけている。

環境省は、能登半島地震と豪雨被害の状況を教訓に対策の検討を進める。

参照元:Yahoo!ニュース