“わずか90秒”で高級車が盗まれる恐怖 「ボタン1つでエンジンがかかる」 脅威の犯行手口“CANインベーダー”から愛車を守るには?

自動車が盗難に遭った人

4月22日の午前3時15分、名古屋市北区の住宅に設置された防犯カメラは、高級車がいとも簡単に盗まれる一部始終を捉えていた。

降りてきたのはマスクに帽子姿の2人組。

あらかじめ狙いを定めていたのか、すぐに黒い車に近づくと、左前方に工具のようなものを差し込み、部品を無理やり外す。

狙われたのは高級車「レクサスLX」。

もう1人が何かを手渡した後、手元で操作をするとライトが点灯。

ロックも解除され、運転席に乗り込むと…エンジンがかかり、勢いよく走り去っていった。

車に触ってから走り出すまでの時間は、わずか1分半だった。

(車を盗まれた 安田秀和さん)「びっくりです。本当にびっくりしました」

愛車を盗まれた安田秀和さんは、悔しさをにじませる。

(安田さん)「まだ買って3か月。中古で買って1000万くらいした。盗難されるかなという気持ちは正直薄かった。悔しい。この連休で旅行に行こうと思っていたので」

全国で後を絶たない自動車の盗難。

なかでも愛知県は去年、866件と全国ワーストに。

今年も先月末まで4か月の被害が443件と去年を上回るペースで、被害額は約16億7400万円に上る。

(愛知県警本部 生活安全総務課 山田幸司 警部)「被害が特定の車種に偏っている、という傾向が見られます」

被害が目立つのはランドクルーザー、プリウス、アルファード、それにレクサスLXで、レクサスLXに至っては、去年は43台に1台が盗まれた計算だ。

(山田幸司警部)「海外でも人気があったり、国内でも大変人気な車種なので」

被害にあった車の9割は、カギがかかった状態だったという。

安田さんのレクサスもカギが掛かっていたが、犯行には近年、急増している「ある装置」が使われたとみられる。

(自動車盗難防止協会 山田晃史 理事)「映像を見ましたが、CANインベーダーというもの」

CANとは『Controller Area Network』の略で、車の制御を司る通信システムのこと。

ほぼすべての車で採用されるこのシステムに「侵入」し、”乗っ取る”ことから「CANインベーダー(CAN “侵入者”)」と呼ばれている。

(山田晃史 理事)「カギがなくてもエンジンをかけたり、ドアを開けたりすることができる」

一般には流通していないこの装置を、カーセキュリティの機器を販売する会社で、見せてもらった。

一見、モバイルバッテリーのように見える、手のひらサイズの装置。

本体には赤と黒のボタンがひとつずつあり、ケーブルの先には、ピンが2本出ている。

(加藤電機 加藤学 社長)「闇のサイトで販売されていて、以前は80万円や100万円以上の価格で売られていた。そういうところで犯人は調達して、盗難に使っている」

犯行の多くは、車のサイドパネルを外してピンを刺し、システムにアクセスするという。

撮影用にボンネットを空けた状態で試してもらった。

(加藤学社長)「コネクタを引っ張り出して、ここにピンを刺すだけ。このボタンを押します」

(記者)「緑に光りました。もうエンジンかかったんですか?ボタン1つで?」

(加藤学社長)「はい」

メーカーも対策を重ねていますが、新しいCANインベーダーも開発されるなどしていて、最新車種も被害に遭っているのが現状だ。

こうした中、ユーザーができる「後付け」の対策も…。

こちらは車に何らかのトラブルが発生した際にアラームが鳴り、エンジンの始動を防ぐシステムだ。

(加藤学社長)「(セキュリティをONにして)同じように、CANインベーダーを起動させます」

※警報音が鳴り響く※

(加藤学社長)「警報が鳴った後、エンジンの始動はできなくなっている。乗り逃げが防止できている」

セキュリティが付いていることが外から見て分かるようにすることも大切だという。

名古屋市北区で、愛車のレクサスを盗まれた安田さん。

(車を盗まれた 安田さん)「車に『AirTag』を入れていたのを忘れていまして、調べたら最後の場所が出てきた」

車内に位置情報がわかる追跡装置を置いていて、最後の場所が分かったという連絡が。

位置情報が指していたのは、北名古屋市で、自宅からは5キロほど離れた場所だった。

最後に更新されたのは、盗難当日の午前3時39分。

犯行の約20分後だ。

(記者)「盗られた後に、(車が)ここに行ったということですよね?」

(安田さん)「そうですね」

その場所に、安田さんの愛車はあるのか…?

位置情報を頼りに向かった。

(安田さん)「あと3分。1.5キロって出ています」

到着したのは畑の中に、住宅が点在するエリア。

周辺を探しても、車は見つからず、位置情報が指す場所の目の前にある家で、話を聞いてみることに…。

(記者)「CBCですけど…。この方が車を盗まれて、そこにGPSが付いていて…」

事情を説明し、話をきいたところ驚きの答えが。

(住民男性)「僕もここで2回盗られているんですよ」

(記者)「何を盗まれた?」

(住民男性)「ランドクルーザーとアルファード」

なんと、この家の男性も自動車盗難の被害にあったことがあると言う。

(記者)「ここに車が来ている」

(住民男性)「ここに来てるの?カメラが付いているから調べられるけど」

(記者)「(防犯カメラを)見られます?」

(安田さん)「4月22日の午前3時半ぐらいです」

防犯カメラの映像を確認してもらうが…。

(住民男性)「映ってないですね」

防犯カメラに車は映っていなかったが、犯人が追跡装置をこのあたりで取り外すか壊した可能性が考えられる。

そして、盗む車を物色していた可能性も…

(住民男性)「絶対なんかあると思う。うちはカモにされていると思っている。ここに止まっていたのが気持ち悪い」

一般には流通していない装置を使い、あっという間に盗まれてしまう高級車。

警察はその多くが組織的な犯行とみて、持ち主に二重三重の対策を呼び掛けている。

参照元:Yahoo!ニュース