上場企業で増加する人員削減、「リーマン・ショック後」に迫るペース 米国の高関税政策が背景に

人員削減をイメージした画像

上場企業による人員削減が増加している。

2025年に国内で早期・希望退職を募集した人数は、前年同期の約2倍に上っている。

年間を通してリーマン・ショック後の09年に迫るペースだ。

米国の高関税政策や世界経済の減速懸念を背景に、業績が悪化する前に黒字でも人員削減に踏み切る企業が目立つ。

東京商工リサーチの集計によると、25年に上場企業が行った早期・希望退職の募集人数(15日現在)は8711人となり、前年同期(4654人)の約2倍に上った。

実施した企業数は19社と、前年同期より8社減ったものの、1社当たりの募集数が多い大規模な人員削減が増えている。

パナソニックホールディングス(HD)は5月、国内で5000人を削減すると発表した。

海外を合わせると1万人規模に上る。

中小型液晶メーカーのジャパンディスプレイ(JDI)は6~8月に希望退職を募り、国内従業員の半数程度にあたる約1500人を削減する。

マツダは50~61歳の正社員を対象に、500人の退職者を募集する。

人員削減の規模は今後、大幅に増える公算が大きい。

日産自動車は世界で2万人を削減する方針を示しており、国内では事務系部門の社員を対象に早期退職を募る方針だ。

半導体大手ルネサスエレクトロニクスも国内外で数百人を減らす計画を明らかにしている。

過去に早期・希望退職が急増したのは、リーマン・ショックや東日本大震災、新型コロナウイルスの感染拡大など外的な要因で経営環境が悪化した時期だった。

しかし、25年に早期・希望退職の募集が判明した上場企業19社のうち、約6割の12社は直近の決算で最終利益(単体)が黒字だった。

25年3月期連結決算が3662億円の最終黒字だったパナソニックHDの楠見雄規社長は、人員削減の理由について、「固定費構造に大きくメスを入れないと再び成長に転じることはできない」と述べた。

米国の高関税政策や世界経済の減速などにより、今後の業績悪化を見込む企業は多い。

SMBC日興証券の集計によると、26年3月期は約4割の企業が最終利益で減益を予想する。

東京商工リサーチの本間浩介氏は「中長期的な競争力を確保するため、黒字のうちに人員を削減する企業が多くなっている。トランプ政権の関税政策の影響で、予防的な削減の動きが出てくる可能性がある」と指摘する。

参照元:Yahoo!ニュース