都構想3度目住民投票に意欲 大阪維新代表・吉村府知事「政治家としての原点」

「大阪都構想」への賛否が初めて問われた2015年の住民投票から、17日で10年となった。
地域政党・大阪維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は読売新聞のインタビューに「僕が政治家になった原点」と都構想の必要性を改めて強調し、3回目の住民投票に向けて意欲を示した。
ただし、党内でも慎重論があり、機運は盛り上がっていない。
都構想は東京都と23特別区の関係をモデルに、大阪市を廃止して複数の特別区に再編する統治機構改革。
15年5月17日に実施された1回目の住民投票では、市を五つの特別区に分ける制度案が僅差で否決された。
四つの特別区に再編する案に練り直して臨んだ2回目の住民投票(20年11月1日投開票)でも否決され、吉村氏は直後の記者会見で「僕自身が都構想に挑戦することはない」と明言した。
しかし、昨年11月の代表選では一転して、制度案の再検討を掲げて勝利した。
吉村氏は当時、「維新の代表である以上、大阪の未来の形を考えていく」と話していた。
維新内部のプロジェクトチームが新たな制度案作成に向けて検討を進めており、現時点での考え方を今月末にとりまとめ、公表する予定。
吉村氏はインタビューで、府・市が一体となって進め、27年度に全面開業を控える「うめきた2期」や、府立大と市立大を統合して22年に誕生した大阪公立大などを挙げ、「都構想は否決はされたが、大阪が大きく変わるきっかけになった。(府・市が)一つの方向性で推進していくことができた結果だ」と語った。
3回目の住民投票について「やると決めているわけではない」とする一方、「(知事と市長が対立すれば)府と市はバラバラの『二重行政』に戻る。大阪が成長し、東京との東西2極の1極を担っていくためには都構想が必要だという方向性は党内で確認している」と述べた。
23年4月の知事選・市長選や府議選、市議選では公約に掲げておらず、3回目に挑戦する場合、吉村氏は「今後、選挙で掲げる必要がある」との認識を示した。
27年春の知事・市長のダブル選のほか、「何が起こるのかわからないのが政治だ」として、任期途中の出直し選の実施も否定しなかった。
ただ、維新内では「3度目となると、市民にわかりやすいメリットを示さないとうまくいかない」(大阪市議)との慎重論もある。
23年4月の府議選、市議選で初当選した新人議員は住民投票を経験しておらず、ベテランとの温度差もある。
1期目の府議は「都構想は維新のルーツだが、1期生同士で都構想の話をしたことがない。今の維新にとって都構想は『ど真ん中』ではないのでは」と話した。
3回目の住民投票に向けた動きが出始めたことに、他党は警戒を強めている。
都構想に一貫して反対してきた自民党大阪府連の前田和彦幹事長(大阪市議)は取材に「3度目にはもはや大義がない」と述べた。
前田氏は過去2回の住民投票を通じて、多くの市民が行政や都市制度について考えるきっかけとなったことは評価しつつ、「真剣に各党が議論し、住民が意思を示した。結論は重いものだ」と強調。
「都構想にはコストがかかる。別の所に費やす方が市民や府民にはプラスになるはずだ」と述べた。
20年の住民投票で維新とともに賛成運動を展開した公明党府本部の石川博崇代表(参院議員)も昨年12月の記者会見で「2度にわたって否決されたことを重く受け止めるべきだ」と語った。
参照元:Yahoo!ニュース