内憂外患の日本経済、米関税前に失速 2四半期連続マイナスも

日本の経済をイメージした画像

4月以降に「トランプ関税」の影響が本格的に出てくると懸念されていた日本経済が、すでに1─3月の時点で失速していたことが16日に発表された国内総生産(GDP)で明らかになった。

この先さらに関税による企業の投資意欲減退や輸出減少、物価高による消費の下押しが予想され、内憂外患の中で2四半期連続のマイナス成長が現実味を帯びつつある。

1─3月期の実質GDPは前期比0.2%減と、4四半期ぶりのマイナス成長だった。

年率換算では0.7%減となった。

「ならしてみれば、緩やかに景気が回復している状況に変わりない」と、政府関係者は総括する。

別の幹部も「中期的な成長シナリオを覆すほどの内容ではない」と話す。

しかし、コメや野菜を始めとした食品価格が上昇した影響で、GDPの6割を占める個人消費が振るわず、前期比ほぼ横ばいだった。

設備投資は予想を上回り4四半期連続のプラスだったが、輸出は4四半期ぶりのマイナスに転じた。

トランプ関税前の駆け込み需要とみられる自動車が増えたものの、知的財産の使用料が減った。

「トランプ関税とは関係なく、日本経済の足腰が弱かった」と、ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミストは指摘する。

先行きは、米関税に伴う消費者心理や、企業の投資意欲の行方が焦点となる。

内閣府が12日発表した4月の景気ウオッチャー調査では、現状判断DIが42.6と、コロナ禍で景況感が悪化していた22年2月(37.4)以来の低水準となった。

マインドの悪化が4月以降の基幹統計に色濃く出ることも予想され、「日本経済の成長を下支えしてきた輸出が下振れする公算が大きく、当面の日本経済は、内憂外患の様相が強まりそうだ」と、SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは予想する。

市場関係者が最も懸念していた米中の関税交渉は、相互の関税率を115%ずつ引き下げることで合意した。

想定外の合意内容に市場は安堵(ど)し、好感する動きが広がった。

一方、トップバッターとしてトランプ政権との協議に臨んだ日本は、着地点を見出せていない。

屋台骨の自動車の輸出には4月3日から25%の関税がかかっている。

最大手のトヨタ自動車は、4、5月だけで1800億円の営業減益要因と織り込んだ。

自動車部品には5月3日から25%、その他の製品にも4月9日から10%の相互関税が上乗せされている。

「米中合意はポジティブだが、日本に対する関税率は何も変わっていない。輸出や生産などが下押し要因となり、4―6月期もマイナス成長が続く懸念は拭えない」と、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは話す。

日本の政府関係者2人によると、石破茂政権で交渉役を務める赤沢亮正経済再生相は来週後半にも再び訪米することを検討している。

特に自動車に対する関税撤廃を求めているが、5月上旬から続く事務レベルの協議ではなお溝が埋まっていない。

「1ー3月期の実質民間内需はコロナ前の2019年平均とまだほぼ同水準で弱いままだ。トランプ関税による外需の停滞の下押しを内需の拡大で軽減する余地がなくなってしまった」と、クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフ・エコノミストは語る。

「4ー6月期の実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカル・リセッションとみなされるリスクもある」と話す。

参照元:REUTERS(ロイター)