万博「パーク&ライド」低迷、渋滞対策で高い料金設定が裏目に 「これだけ利用されないのは想定外」

13日で開幕から1か月となる大阪・関西万博で、マイカーで駐車場に止め、シャトルバスに乗り継いで会場に向かう「パークアンドライド(P&R)」の利用が低迷している。
周辺の民間駐車場より料金が高いのが原因とみられ、運営収支への影響が懸念される。
万博会場は人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)にあり、マイカーでの乗り入れは禁止されている。
日本国際博覧会協会(万博協会)はマイカー客向けに、予約制のP&Rを夢洲の隣の舞洲(まいしま)(同区)と堺市堺区、兵庫県尼崎市に計3か所用意した。
駐車台数はそれぞれ最大6240台、2000台、3000台。
基本料金は舞洲が5500円、堺と尼崎が5000円で、時期によって割引や加算がある。
会場までのシャトルバスの料金は無料としている。
万博協会幹部によると、開幕1か月間の利用台数は1日計5000~7000台と見込んでいたが、実際には最大容量の1~2割にあたる1000~2000台にとどまっている。
料金は、万博会場近くのテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」(同区)の駐車場(3600円)と比べて高くなっている。
万博協会は料金の設定にあたり、近郊からP&Rを利用した場合、鉄道よりやや高くなるようにした。
試算では、神戸市から家族4人(大人2人、子供2人)で来場した場合、鉄道運賃は往復6240円だが、P&R(尼崎)の料金は高速代を含め6800円。
念頭にあったのは、2005年愛知万博だ。
来場者の半数がマイカーで訪れたため、P&Rの駐車場が満杯になり、周辺道路では連日渋滞が発生した。
駐車料金は3000円だった。
今回の万博ではできるだけ公共交通機関での来場を促し、渋滞を起こさないことを目指した。
万博協会幹部は「愛知のような渋滞は避けられているが、これだけ利用されないのは想定外だった」と話す。
東西二つの入場ゲートのうち、P&RやJR桜島駅などからのシャトルバスの利用者は西ゲート、大阪メトロ中央線の利用者は東ゲートから入場する。
利用者の多くは東ゲートに集中しており、東ゲートの混雑改善には西ゲートの活用が必要となる。
万博協会は、P&Rのシャトルバスの運行経費は約90億円で、駐車場の料金収入で賄う計画を立てているが、利用低迷が続けば、1160億円の運営費の収支に悪影響を与えかねない。
万博協会の石毛博行事務総長は12日の記者会見で、料金の値下げには慎重な姿勢を示しつつ、「P&Rは大きな荷物を車に積んで来場できる利点もある。使いやすさが行き渡ることが重要だ」と述べ、周知が必要との認識を示した。
来場者の中には、大阪メトロ中央線沿線の割安な民間駐車場に車を止め、地下鉄に乗り換えて会場に向かう人もいる。
大阪市中央区の会社員男性(52)は8日午後、中央線の大阪港駅近くの民間駐車場に車を止めた。
母親(77)と一緒に地下鉄に乗り換え、万博会場に向かうためだ。
会場最寄りの夢洲駅までは2駅で、駐車場の1日の最大料金は平日800円。
2人分の鉄道往復運賃1320円を足してもP&Rの半額以下だ。
男性は「P&Rは高すぎるし、予約の仕組みが複雑なので利用しようとは全く思わなかった」と話した。
民間駐車場のシェアサービスを展開する「akippa(アキッパ)」(大阪市)によると、4月13日~5月8日に万博での利用は3000回以上あった。
中央線沿線に集中しており、1か月先まで予約が埋まっている駐車場もあるという。
P&Rのある大阪市此花区、堺市、尼崎市には駐車場は計1000か所以上あり、価格は1日数百円~2000円が大半。
同社の担当者は「値段が手頃なのが大きいのではないか」と話す。
万博協会は、市民が利用できなくなるなどとして、民間駐車場の利用自粛を求めている。
参照元:Yahoo!ニュース