湯船はコスパ・タイパが悪い?「浴槽レス」若者に人気 掃除は手軽で家賃も割安

バスタブを撮影した画像

都市部などで浴槽のないシャワーだけの「浴槽レス」の集合住宅が人気を集めている。

湯船につかることを重視しないライフスタイルが若い世代を中心に広がっていることが背景にある。

「湯船につかる習慣が元々ない。余計な掃除が増えないよう浴槽がない物件を探した」。

東京都内の賃貸アパートに住む動画配信業の男性(32)は2021年秋、一人暮らしを始める際、「面倒なものをいかに省けるか」を重視した。

洗濯物を干す手間を省けるドラム式洗濯乾燥機が置ける、バルコニーや浴槽がないといった条件で12平方メートル(ロフト付き)の物件を選んだ。

シャワーは毎日使うが、大掃除は不要で、使用後に水滴を軽く拭き取る程度。

家賃は6万円弱で、「設備と築年数を考えると割安だ」と話す。

物件はアパートの企画・開発を行う「シノケンプロデュース」(東京)が手がけた。

東京23区に展開する浴槽レスの賃貸アパート「アヴァンド」シリーズは主要駅近くなどにあり、計約1万戸の入居率は98%と高い。

チーフデザイナーの北野文朗さんによると、シャワーのみで床面積を抑え、賃料は比較的安価という。

「若い世代を中心に需要がある」と話す。

分譲マンションでも、シャワーブースを設けて空間を有効活用した物件が好評だ。

伊藤忠都市開発(東京)が22年に分譲した「クレヴィア両国国技館通り」は、総戸数77戸中、床面積30平方メートル前後の25が浴槽レスで、ユニットバスタイプの部屋より半畳ほどリビングが広く、完売した。

シャワーブースはシャワー設備の質にもこだわる。

頭上高くにシャワーヘッドがある「オーバーヘッド」タイプで、黒を基調にした高級感のある壁を採用する。

購入者へのアンケートによると、「風呂に入りたい時は近くの銭湯に行く」という意見もあった。

住宅設備販売の「ミラタップ」(大阪)では、リフォーム用などでシャワーやドア、壁や床がセットになった「シャワーブース」が好調だ。

「LIXIL(リクシル)」(東京)は昨年11月から折り畳み式の布製浴槽を備えた浴室空間「バストープ」を扱っており、シャワーと浴槽を使い分けることができる。

テントのような生地の浴槽を、専用のフックに掛けて使う。

使わない時はコンパクトに畳み、空いたスペースで洗濯物を干すなど有効活用できる。

単体での販売はなく、シャワールームとのセット販売で60万5000円から。

風呂は面倒と考えている人は増えているようだ。

調査会社クロス・マーケティング(東京)が今年2月、20~69歳の男女1100人を対象に行った調査では、風呂に入るのが「好き」と答えたのは64%。

「面倒」は36%で、前年に比べ6ポイント増加し、20~30代の4割が面倒と感じていた。

ライフルホームズ総研のチーフアナリスト、中山登志朗さんによると、浴槽レスは5年ほど前から広がり始めたという。

「コロナ禍以降、自宅で過ごす時間が増え、空間を効率的に使って快適に過ごしたいという欲求が高まった」と話す。

さらに、浴槽に湯をためる水道代や入浴時間を「コスパ、タイパが悪い」と考える若い世代が増えたことも背景にあるという。

「浴槽レスは『退化』ではなく、快適さを追求した結果の『進化』。今後もニーズに合わせた住宅が増えていくだろう」と話す。

若い世代が志向するスペースの効率性などとは別に、高齢者の溺水事故防止や介助者の負担軽減という視点でも浴槽レスが注目されている。

国土交通省国土技術政策総合研究所(茨城)は、2021~23年度、従来の浴室から浴槽をなくした広めのシャワールームを介助時に使用することの意義や基準のあり方を研究した。

担当者は、「高齢者がより安全に入浴を楽しめる。普及のために呼びかけていきたい」と話す。

参照元:Yahoo!ニュース