「清流の里」の水道水で食中毒の衝撃 群馬・神流町 掘削調査で農業用水流入を確認

食中毒をイメージした画像

群馬県神流(かんな)町で町営の水道水を飲んだ住民14人に腹痛や下痢など食中毒の症状が出た事案は、水道水をためるタンクの排水管と隣の農業用水タンクの排水管が地中でつながっていたことが掘削作業で確認された。

農業用水の流入と断定されたことに加え、「清流の里」として知られる町で起きた点で、二重の衝撃が広がった。

なぜ排水管同士は地中でつながっていたのか。

令和5年の国土交通省調査で「水質が最も良好な全国17河川」に選ばれた清流・神流川が中央を流れる神流町。

役場のある中心部から長野側へ数キロ行った相原地区で住民が腹痛や下痢などの食中毒症状を訴えたのが、4月11日。

その数は9歳以下から80代までの男女14人で、いずれも相原配水池のタンクから供給された水道水を飲んでいた。

神流町が中の水を調べたところ、「一般細菌数」が水質基準の1.5倍にのぼり大腸菌も検出。

さらに複数の住民の便から鶏や牛、野生動物などの腸管内に生息する細菌「カンピロバクター」が検出された。

県は29日、この水道水を飲んだことによる食中毒と断定、公表した。

ただ入院した人はおらず、いずれも快方に向かっている。

タンクは30立方メートルほどの大きさで、高台にある相原丹生神社裏の斜面に埋設されている。

さらに上部にある浄水場で塩素処理された水がタンクに送られていて、水があふれたりすると直径5センチほどの排水管から放出する。

食中毒発覚後、町の担当者が水を抜き空にしたタンク内に入ったところ、「排水管から水がチョロチョロとタンクの中に流入していた」(担当者)。

タンクから3メートルほど離れた位置に農業用水用タンクも埋められており、こちらは近くの沢の水を引いていて塩素処理などはされていない。

このため県では「沢に野生の鳥などが落とした糞(ふん)尿が農業用水に入り込み、何らかの原因で排水管から飲料用水タンクに流れ込んだ可能性もある」としていた。

なぜ農業用水は流れ込んだのか。

地中にある2つのタンクの排水管がつながっている可能性も取り沙汰されたが、町の担当者は「あくまで可能性で断定はできない。とにかく掘ってみなければわからない」と話していた。

5月1日から始まった町による掘り返し作業は、油圧ショベルに手掘りもまじえ、慎重に進められた。

その結果、給水用タンクの排水管と農業用水タンクの排水管が地中でつながっていることを確認、直ちに切断したという。

排水管とはいえ、給水用タンクと農業用水タンクがつながっているというのは「あってはならないこと」(町の担当者)。

2つのタンクはいずれも昭和40年ごろの埋設で、約60年経過していることから「設置の経緯を含め、詳細はわからない」(同)。

過去に「水道の水が濁っている」という住民の苦情も数回、あったが、食中毒騒動のようなことは起きなかったという。

ただ今回、町の管理運営の問題点も発覚した。

水道法ではタンク下流の給水栓から採取した水の残留塩素検査を水道事業者に課しているが、町は上流の浄水場での検査は行っていたが、給水栓での検査は実施していなかった。

実施していれば、事前に問題点を把握していた可能性はある。

水道水が原因の食中毒は「県内でなかったとは断言できないが、極めて異例なのは間違いない」(県食品・生活衛生課)。

しかも清流の里だけに驚きも大きい。

町は神流川の清流と自然豊かな景観を生かした観光も盛んで、夏場には川遊びや釣りを楽しむ行楽客も多い。

神流川沿いにはキャンプ場も点在しているが、問題の飲料用水タンクは、相原地区25世帯向けだ。

その25世帯で水道水を飲んだ住民は37人いたが、発症しなかった23人は生水を避け煮沸して飲んでいた。

過去の濁り水の教訓からかもしれない。

参照元:Yahoo!ニュース