妻はがん、後継ぎもなく それでも踏ん張るカーネーション農家

母の日の贈り物として定番のカーネーションだが、農家は猛暑や燃料・肥料の値上げなどに苦しんでいる。
それでも踏ん張ろうと工夫を続ける現場を訪れた。
大型連休中、神奈川県秦野市郊外にある農家を訪れた。
「今の時期は一日中体を動かさないと間に合わないんです」。
少し蒸し暑いハウスの中で、山口明男さん(69)がつぼみが少し開いた「出荷可能」なカーネーションを丁寧に切りながら、歩き回っていた。
いま、40年作り続けてきたカーネーション栽培に異変が起きているという。
「いろんなものが値上がりして、経費はこれまでの2~3割増えています」。
だが、売値は市場の需要で決まるため、簡単に上乗せできない。
冬場、ハウス内を温めるのに必要な燃料はどんどん高騰。
少しでも使う量を減らそうと、体にむち打ち、たった1人で保温のための内張りカーテンをつけた。
毎年のように繰り返される夏の猛暑も悩みの種だ。
「まだ根が十分に張っていない時に高温になると、生育が止まってしまうんです」
約1千平方メートルある畑に、長年の試行錯誤から得たノウハウを注ぎ込んできた。
「様々な色合いがあって、一輪や(枝分かれして小花がつく)スプレー咲きなど、種類も豊富」とカーネーションの魅力を語る。
だが、「それもあと数年かな」。
一緒に畑を守ってきた妻にがんが見つかり、体力の衰えも感じている。
子どもには農業をする意思はなく、体が動かなくなったら、畑はやめようと思っている。
全国的なカーネーションの産地として知られた秦野市は180軒を超えるカーネーション農家があったが、今は10軒ほどに減った。
「残せたらいいんだろうけど、現実は厳しいです」と山口さんは話す。
参照元:Yahoo!ニュース