「料理はお金がかかる…」 物価高、激安スーパーの総菜で家計防衛 売り場では次々と客の手が 伸びる売上高 店はコスト抑制や品ぞろえ強化で需要取り込みへ

スーパーの惣菜売り場を撮影した画像

食品や光熱費などの高騰が続く中、「家計防衛策」の一環で食料品スーパーの総菜の人気が高まっている。

長野県内のスーパーの総菜コーナーで利用客に話を聞くと、店内調理の揚げ物や煮物を買うことで、自宅で調理する場合にかかる光熱費を節約できる―との答えが返ってきた。

スーパー側は原価を抑えつつ商品の種類を増やすなど、旺盛な需要を取り込もうと力を入れている。

4月21日午前、長野市稲葉の激安スーパー「ラ・ムー長野店」の総菜コーナー。

弁当や揚げ物などに、ひっきりなしに客の手が伸びる。

市内の会社員、矢沢美季さん(51)は「食用油、ガス・電気代も高い。料理をするとお金がかかる」とため息交じりに話す。

夫と2人暮らし。

アジフライやコロッケなど揚げ物は総菜で済ませることが多いという。

自宅台所のこんろはプロパンガスで長時間使うと料金が気になるため、「最近は煮物も総菜に頼るようになった」。

長野市松代町の会社員、北村栄章(ひであき)さん(54)は、買い物かごの中に1個70円のおにぎりを12個投入した。

「この店はおにぎりが安いので…」。

コメの価格高騰に困っていて麺類を食べることが増えたが、この日は一緒に暮らす母と弟の分も含めておにぎりをまとめ買いした。

北村家では夕食を中心に総菜を利用することが多い。

ラ・ムーは低価格商品が多いとし、自宅から離れているのでガソリン代も余分にかかるが「来る価値がある」と話した。

4月18日昼ごろ、安曇野市の原信(はらしん)安曇野店の総菜コーナーでは、女性(83)=松本市=が夫と弁当を選んでいた。

光熱費や食材費が気になっており、ポテトサラダや生野菜サラダを買っては、自家製のタマネギやキノコの酢漬けを加えて食べている。

「かさ増し」の工夫だ。

日々、新聞の折り込みチラシでスーパー各店の商品の値段を見比べる。

「同じ商品でも内容量が減っていることもある。そこもよく見るようにしている」

総菜の品定めをしていた東筑摩郡生坂村の農業女性(40)は「揚げ物は油をたくさん使うので、家ではあまりやらなくなった」と話した。

スーパーの総菜部門の売上高は全国的に好調だ。

全国スーパーマーケット協会(東京)が約8300店を対象に行う調査によると、新型コロナ下の2020年は自宅調理が増えた影響もあり、総菜部門は前年比1.2%増だったが、21~24年の4年間は、各年とも総菜部門の売上高が4~5%台の伸び率だった。

同協会は、総菜が好調なのは「さまざまな要因が重なっている」としつつ、物価高騰の影響があると認める。

「最近はコメが高いため、価格上昇が比較的抑えられている弁当や麺類の伸びを好調の要因に挙げる店が多い」と説明する。

県内でラ・ムーを運営する西源(松本市)によると、同社の総菜部門の売上高は2年前の1.3倍に伸張。

需要の拡大を受け、総菜の種類を1.5倍に増やした。

松本市の自社工場で開発・製造し店舗に配送することでコストを抑えている上、天ぷらを揚げる従業員研修を行うなど品質向上にも注力する。

ラ・ムー長野店の丸山翔太店長(38)は「コロッケや山賊焼きといった手頃な商品が支持されている」と話す。

県内外で原信を展開するアクシアルリテイリング(新潟県長岡市)も、昨年4~12月のグループ全体の総菜部門の売上額が前年同期比6%増だった。

原材料の一括仕入れで原価を抑える上、グループの食品加工会社で下処理などを集中的に行っている。

同社のCSR・広報部は「水産や精肉部門も含めて店内加工総菜の品ぞろえを強化している」とした。

参照元:Yahoo!ニュース