ディズニーの世界忠実に表現 年間200メニュー開発 TDRシェフがこだわる「没入感」

東京ディズニーランドの外観を撮影した画像

浦安市舞浜の東京ディズニーリゾート(TDR)は、東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)を擁する日本最大のテーマパークとして幅広い世代から根強い人気を誇る。

迫力満点のアトラクションに、ロマンチックなショーと、一歩足を踏み入れれば夢の世界だが、非日常を演出する上で欠かせないのが、ディズニーの「食」だ。

こだわり抜かれた空間で提供する美食で、ゲストをもてなすシェフらにこだわりを聞いた。

「日本人に受け入れられる味付けを意識し、作品の世界に浸れる没入感に徹底的にこだわっています」

TDSのマスターシェフを務める羽生耕平さん(51)は、レストランメニューについて、こう強調する。

飲食施設は、TDLが54カ所、TDSが40カ所。毎年約200メニューを開発しているという。

近年、インバウンド(訪日外国人客)の来園が増える中、海外で需要が高まる植物由来の原材料を使用した「プラントベース」のメニューも用意し、多様なニーズに対応している。

年間の来場者数は計約3千万人。

各レストランには、毎日莫大な注文が入る。

「おいしいのは当たり前で、見た目にこだわりつつ、いかに手数を減らして調理工程を効率化し、安全に、温かく提供するかも大事。1つのメニューを開発するのに、何回も試作します」(羽生さん)。

昨年6月に開業したファンタジースプリングスは、特にレストランにこだわりが強いエリアだ。

開業の約3年前からメニュー開発に取り組んだ。

開発に際し、米ディズニー社が強く求めたのが、各作品の世界観を忠実に再現したメニューであるかどうか。

ゲストに非日常の空間を味わってもらうために、欠かせない要素だからだ。

羽生さんは「米国では、作品のストーリーに対するこだわりがすごく強くて、日本人と発想が違う場合もある。イメージをすり合わせるのはなかなか難しかった」と振り返る。

ボツのメニューは数知れず。

それでも、シェフたちが一丸となって味、調理作業の効率、作品の世界観を徹底的に追求し続け、ゲストを満足させるメニューをそろえた。

「アレンデール・ロイヤルバンケット」は、アナと雪の女王の世界観を忠実に再現したレストラン。

祝宴をイメージした大広間には玉座が置かれ、作品に登場するキャラクターの肖像画や美しいシャンデリアなどの装飾が没入感を高める。

同レストランのメニュー開発に携わったのが、片岡龍之介さん(37)。

アレンデールロイヤルセット(シーフード、3500円)は、片岡さん自信の一品だ。

メーンのシーフードのパイ包み焼きは、「香り高いサフランをクリームソースにして、オマールエビや北欧で採れた赤魚などのシーフードをふんだんに使用し、リッチな味わいに仕上げました」(片岡さん)。

開発にあたり、片岡さんらは国内各地の北欧料理店を食べ歩いた。

「例えばスープはクリームを使うなど、北欧料理には、寒い環境の中でも温かく料理を出す文化があるのが興味深い」(片岡さん)。

パイ包みも、学びを生かした一品だ。

映画を何度も見返し、シェフ同士で意見を交わしながら、作品の世界観に沿うメニューを作り上げていった。

TDRでは、どうしてもアトラクションやショーが注目されがちだ。

2人は、ゲストがもっと園内での食事に目を向けることを願う。

「レストランに入れば、ディズニーの世界観に没入できる。我々もさらに魅力的なメニューを開発していき、食事が思い出に残ってもう一度、TDRに来たくなるようなきっかけになれば嬉しい」

参照元:Yahoo!ニュース