水俣病問題、いまだに解決しないのはなぜ?

疑問が生じている人

「公害の原点」といわれる水俣病は1日、公式確認から69年を迎えた。

熊本県水俣市では犠牲者慰霊式が開かれる。

昨年は環境相と患者・被害者団体との懇談の場で、環境省職員が団体側の発言中にマイクの音を切る出来事があった。

会合の進行が最優先で、被害者の訴えに耳を傾けない国側と、現在進行形の苦しみを抱える患者・被害者との溝を象徴する場面と受け止めた人も多かったはず。

水俣病の問題はなぜ終わらないのだろうか。

Q&Aで解説する。

Q 水俣病の問題がいまだに解決しないのはどうして?

A 水俣病は、化学メーカー「チッソ」の水俣工場から出た排水に含まれていたメチル水銀に汚染された魚介類を食べたことで脳に障害が起こる病気です。完全に治す方法はなく、1956年の公式確認から69年たった今も症状に苦しみ、補償を求める人が大勢います。

Q 汚染された魚を食べさせられたのに、なぜ補償されない人がいるの?

A 「水俣病患者である」と行政が認定して初めて補償が受けられる仕組みなのですが、その認定基準が厳しいためです。国が77年に示した基準は、手足のしびれなどの「感覚障害」に加え、「運動失調」や「視野が狭くなる」などの症状の組み合わせを条件としました。その結果、基準に満たず認定されない人が多く出ました。不知火(しらぬい)海沿岸に居住歴のある人は数十万人単位でいますが、2025年3月末時点で認定患者は2284人(うち2073人は死去)に過ぎません。

Q 基準は見直されないの?

A 最高裁は13年、感覚障害のみでも「総合的に水俣病とする余地がある」との判断を示しました。これを受け、環境省は14年、基準そのものは見直さず、基準運用の新しい通知を出しました。感覚障害のみでも認定する可能性を認めながらも、汚染された魚介類を約半世紀前に食べたことを客観的に証明するよう求める内容でした。「被害者の切り捨てだ」という批判は消えていません。

Q だから裁判が続いているんだね。

A 現在、大阪高裁や東京地裁などで約1600人が国などに損害賠償を求めて裁判を続けています。国は95年の「政治決着」、09年の「水俣病被害者救済特別措置法」と2回にわたって救済策を作りました。しかし、救済の対象外となった人でも後に裁判で患者と認められたり、救済策が締め切られた後に水俣病の疑いと診断されたりした人もいて、特措法が掲げた「水俣病問題の最終解決」には至っていません。

Q 被害の全容は明らかになるのかな。

A 国は今年度からようやく、脳の状態や活動を測定する機械を用いた住民健康調査を試験的に始める方針ですが、検査を受けられる人数が限られるなど、被害者団体からは「全容解明に役立たない」という声が出ています。

参照元:Yahoo!ニュース