コメ譲歩に慎重論、車関税の除外不透明 日米2回目の交渉

白米を撮影した画像

近く米国と2回目の関税交渉を開く日本は、農産品の輸入拡大を手札の1つとして検討する一方、最重視する自動車関税の減免が見通せない中で、主食のコメについてはカードを切るべきではないとの慎重論が政府・与党内で強まっている。

成果を急ぐトランプ米大統領は日本との合意が「近い」としているが、実質的な中身を伴わない可能性もある。

4月上旬に米ワシントンで1回目の協議に臨んだ赤沢亮正経済再生相は、金色の貯金箱を土産物として持参した。

トランプ大統領に渡した大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」の形をした貯金箱が、中国製だったことはこれまで注目されてこなかった。

日本をはじめ多くの国を混乱の渦に巻き込んだ「トランプ関税」の主要な狙いは供給網を組み換え、中国を締め出すこと。

日本の土産物は、期せずしてその難しさを浮き彫りにした。

最大の貿易相手国の中国をターゲットにする米国にとって、最も緊密な同盟国の日本との交渉は、トランプ大統領のやり方の成否を測る重要な試金石とみられている。

しかし、交渉が難航しそうな兆候はすでに表れている。

赤沢氏は2回目の交渉のため、30日から再び訪米する。

石破茂首相に近い政府関係者は、米国の優先事項をまだ見極めていると話す一方、農産物の輸入拡大や自動車の輸入障壁引き下げを要求してくるとみていると説明する。

トランプ大統領はコメの輸入に対する日本の関税に不満を表明しており、供給不足で価格が高騰するコメの輸入を米国から増やす案は日本側にとって応じやすいとみられている。     

だが、日本は7月に参院選挙を控え、与党の自民党は自国に不利になるような合意、とくに重要な票田であるコメ農家に不利になりかねない合意をすることに懸念を示している。

また、すでに発効した25%の自動車関税から日本が除外されない限り、コメで譲歩する必要はないとの声が複数の政府・与党関係者から聞かれる。

自動車は日本の対米輸出の3割近くを占め、日本側は交渉の最優先事項に位置付けているが、これまでの米側とのやりとりで日本だけ例外にはできないとの感触を得ていると、複数の政府関係者は話す。

トランプ政権は5月3日までに自動車部品への関税発動も計画している。

自民党は25日、「農林水産品を犠牲にするような交渉方針は断じて受け入れられない」などとする決議文を江藤拓農水相に申し入れた。

一方、党の森山裕幹事長は米国産のトウモロコシと大豆の輸入拡大には理解を示しており、日本側は交渉カードとして検討していく可能性がある。

日本にとっての安心材料は、為替と安全保障が関税交渉と切り離されたことだ。

為替を巡る交渉は別の枠組みで話し合うこととなり、実際に25日、ワシントンで加藤勝信財務相とベッセント財務長官が会談した。

在日米軍駐留費を含む安保の問題についてはトランプ大統領が24日、関税交渉の取引材料にしないと明言した。

それでも、日米交渉を巡る見通しは、訪問先のバチカンで25日にトランプ大統領が語った「(合意は)極めて近い」とする見方とは対照的だ。

ロイターは22日、ワシントンの関係者の話として、日米が暫定的な協定の締結に近づいているものの、主要な懸案の多くは先送りされていると報じた。

最終的な合意に至らない可能性もあるという。

専門家の間には、6月にカナダで開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)で石破首相とトランプ大統領が会談し、合意を発表すると予想する向きもある。

7月の参院選を前に日本側が譲歩するのは政治的なリスクが大きいとの見方もある。

「米国が手の内を明かすのを待つ、というのが日本の戦略だろう。時間よりも内容を優先する可能性が高い」と日本の情勢について投資家に助言するロールシャッハ・アドバイザリーのジョセフ・クラフト代表は話す。

「トランプ大統領は内容よりも時間を優先するだろう」と語る。

ロイターは米通商代表部(USTR)に日本との交渉についてコメントを求めたが、報道官は回答を控えた。

ホワイトハウスと日本の外務省にもコメントを求めたが、返答を得られてない。

赤沢経済再生相はトランプ大統領に渡した「ミャクミャク」の貯金箱について、万博への招待の意味で贈ったと説明した。

万博の公式ホームページによると、貯金箱の原産国は中国。

商品を取り扱うヘソプロダクション(大阪市)も、中国製であることを確認した。

参照元:REUTERS(ロイター)