大浦龍宇一、俳優業の傍ら週2日で学校勤務「求められたものに応えたい」演技でも教育でも「否定しない」を大切に

俳優の大浦龍宇一(56)が昨年、デビュー30周年を迎えた。
1994年にデビュー作のフジテレビ系ドラマ「この世の果て」で脚光を浴び、これまでに出演した作品は150作以上。
現在は4月期のフジテレビ系「あなたを奪ったその日から」(北川景子主演、月曜・後10時)に出演している。
2年前から週2日、都内の小学校に勤務。
俳優活動だけでなく、2年前に始めた教育活動についても語った。
写真撮影が行われたのは、満開の桜の木の下。
差し込む日差しが、大浦の柔らかい笑みを照らす。
穏やかな声色は春の空気のように、温(ぬく)もりと優しさを感じさせた。
父方の祖父は俳優の高田浩吉さん、叔母は女優の高田美和。
時代劇の世界で活躍する芸能一家に生まれた。
小さい頃から芝居に触れる環境にあったが、自身の心をとらえたのは時代劇ではなく、トレンディードラマ。
家族の影響を受けたわけでもなく、有名になりたい、芸能人に会いたいという下心があったわけでもない。
「こういう(トレンディードラマのような)作品に出られたらいいな」という純粋な思いが、自らを俳優業へと突き動かした。
「若い頃からずっと『変わらないもの』を求めてきて。お芝居を通して、心のキャッチボールをするところに、それがあるんじゃないのかな」。
役を通じて共演者からかけられる言葉や愛情など、心のよりどころになるものを見つけるため、日々模索してきた。
デビュー作は、野島伸司氏が脚本を手がけたドラマ「この世の果て」。
憧れだったという鈴木保奈美(58)の主演作だった。
「いきなりドンって目の前に現れた感じで気合だけで飛び込みました。『この世の果て』がなかったら、今の自分はいない」。
顔の半分がやけどの痕に覆われた役どころが大きな印象を与え、一躍脚光を浴びた。
初期の頃は歌手としても活動したが、葛藤があった。
「自分の内側にあるものを表現したいなというところの音楽だった。だけど、それが思うように出せていない」。
20代終盤を迎えた頃に「芝居も音楽もどっちつかず」と俳優業に専念することを決めた。
そのとき、固く誓ったことがある。
「仕事は断らないようにしよう」。
俳優の活動に全てをささげることにした以上、どんな役でも引き受けることを決意。
2007年に離婚した元妻との間に生まれた長男を男手一つで育てることになった11年からの6年間を除き、オファーを受けた仕事は快諾し続けている。
デビュー当初は連続ドラマの1クール(3か月)を通して出演することが多かったが、近年は1話のみのゲスト出演がほとんど。
短いスパンで数多くの作品に出演し、携わったドラマや映画、舞台の本数は150本以上にわたる。
さまざまな役を経験し「本当に天地左右ぐらいの違いがある。サスペンス、Vシネマ、コメディー…。ありがたいなって思いますね」と喜びをかみ締めた。
昨年デビュー30年。
今年は4月期のフジテレビ系ドラマ「あなたを奪ったその日から」に出演中だ。
「いろんな現場に行くし、いろんな監督とも出会えた。仕事を断らないようになって、気づいたことも多いかなと思います」。
一つ一つの作品が学びとなり、次第に自身の演技にも変化が生じた。
台本に対して、忠実に演じることを意識するようになった。
「若い頃は自分さえよく見えればと思っちゃうことがあって、(セリフなどを)変えたがっていた。でも、みんなで一つになることで、初めて良いものができるんだなと気づいた。脚本家の方が伝えたいことをどう表現できるかなってことを考えるようになりました」
2023年からは俳優業の傍ら、都内の区立小学校で学習指導補助員として勤務している。
きっかけは、昨今の作品に対する複雑な思いからだった。
「今の世の中はダークな作品が多いなと思っていて、特に子供たちに向けての作品もすごくダークだなと」。
一度、子供向けの作品を自身で作ってみた。
それを教育関係に詳しい知人に見せたところ、「今の子供を知った方が良いんじゃない?」と勧められ、学習指導補助員の仕事を紹介された。
主な仕事は、勉強に取り組むことが苦手な児童のサポート。
教員資格がなくても指導ができ、学級担任の教員とは異なるアプローチで子供たちと接している。
さらに「初めて言うんですけど、去年の夏から別の小学校で学童保育にも行っていて」。
放課後に宿題をしたり、グラウンドで遊んだりする児童を見守る「子育てサポーター」としても活動する。
そのため、週2日、学習指導補助員として勤務後、別の小学校に移動して子育てサポーターとして勤務する生活を送る。
子供と接する上で大切にするようになったのは「聞く」「待つ」「否定しない」の3つ。
「黙って聞いて否定せずに受け止めると関係性ができてきて、友達みたいになってくる」
相手の話を受け入れることで心を開いてくれる感覚があった。
「きれいごとですけど、『愛されてるよ』とか『一人じゃないよ』っていうことが、うまく伝わる時があるんです」。
心を通わせることで、かつて自身が俳優を志したときに求めていた「変わらないもの」を子供たちにもたらすようになっていた。
そんな経験から「芝居も一緒で、聞くことのできる俳優になりたい。監督、演出家の方、台本の言うことを聞ける自分でありたい」と、これまで以上に寛容な姿勢を見せる。
撮影現場でも教育現場でも、自身の辞書に「否定」の2文字はない。
貫くのは「求められたものに対して応えていきたいなっていうスタンス」。
与えられた役割を全うすることに心血を注いでいく。
参照元:Yahoo!ニュース