万博開幕後もネパール館の工事ストップ!「期日までに支払う」言葉信じて業者“持ち出し”も 一国の“政府”相手に「未払いリスクあると思わず」関係者が明かす裏側

“万博の華”といわれる海外パビリオン。
ところが、開幕後も会場内のネパールのパビリオンは、建設会社への支払いが滞ったため、工事が完全に止まってしまい、再開のめどは立っていない。
このままだと開催期間中のオープンすら危ぶまれる中、いったい、何があったのか―。
関係者への取材で、ネパール側との交渉の裏側が明らかになった。
万博会場の大屋根リング内の北東部分に位置するネパールパビリオン。
開幕から10日以上が経過しているが、施設の周囲にポールが置かれ、立ち入りができない状態となっている。
建物はほとんど完成しているようにも見え、外観はきれいに壁の装飾がされている。
だが、窓から内部を覗いてみると、資材が今も積まれ、中庭部分には土が盛られたまま―。
「工事費用の未払い」「再開のめどが立っていない」という状況が22日に報道されて以降、「ニュースで知って、見に来た」と未完成のパビリオンを訪れて写真を撮る人の姿もあり、「ここまで完成したんだから」「楽しみにしていたから、半年間のうちになんとか」と開館を待ち望む声も聞かれた。
問題の発端となっているのが、金をめぐる問題だ。
関係者によると、ネパール政府と工事業者の間では、工事が始まる前に払われる「着工金」が予定通り支払われ、去年8月に工事がスタートした。
請け負った業者だけでなく、工事には下請け・孫請けなど様々な業者が携わり、外観工事は約9割まで完了していた。
ところが、着工金を支払って以降、ネパール政府側から工事業者に対して支払いが滞るようになる。
完成までのスケジュールもあり、業者側は「いつか払われるだろう」と思って工事を続けていたが、一向に支払われないまま。
業者は“持ち出し”で工事を続けていたが、金銭面のやりくりが厳しくなり、一部の下請け・孫請け業者への支払いまでもできない状態に陥った。
ついに、開幕まで3か月間となった今年1月、工事をストップせざるを得なくなったという。
この間、関係者はただ指を加えて見ていたという訳ではなく、水面下では様々な交渉が行われた。
ネパール政府と工事業者、万博協会、さらには日本政府を交えた4者が、支払いの催促を何度も行ったが、ネパール側はその度に「期日までに払う」と繰り返し、その言葉を信じてしまったという。
「(開幕までに)間に合う予定で工事をやっていた。やはり完成させたかったし、その思いだけでやってきた」と関係者は打ち明ける。
なぜ支払いが滞ってしまっているのか―。
非常に不可解ではあるが、その理由は分かっていない。
ネパール側との交渉の場でも、説明が二転三転したり、納得できるような内容のものではなかったという。
取材班がネパールの大使館に問い合わせたが、23日の段階では、「現時点で回答できることはありません」というものだった。
万博協会は、海外参加国の未払いへの対応として、政府が100%出資する「日本貿易保険」による『万博貿易保険』というものを用意していた。
具体的には、参加国の国内情勢の変化によって、建設費などが払えなくなるリスクがあったとき、その大部分を補填するというもの。
この貿易保険に契約しておけば、未払いやトラブルが起きたときに、工事費の全額もしくは大部分が補填される。
ところが、今回、未払いとなっている受注業者はこの保険には入っていなかったという。
いくら海外とはいえ、相手は一国の「政府」で、「未払いのリスクがあるとは思わなかった」と関係者は明かす。
今後について、万博協会は23日、「ネパール側は引き続き出展したいという意向を持っている。協会としてもしっかり支援していきたい」と語った。
ただ、ネパールパビリオンは、参加国が自前で建設する「タイプA」と呼ばれるもので、協会が建てた施設内に展示する「タイプB」や複数の国が一つのフロアで展示する「タイプC(コモンズ館)」、協会がパビリオン建設を代行する「タイプX」とは異なる。
今回のケースの場合、海外参加国と民間企業の間での契約であり、両者の間の金銭をめぐるトラブルに、国や協会が金銭を補填するというのは、保険が適用されない限りは難しい。
開幕前であれば、タイプBやタイプXなどの違う形態のパビリオンに促すこともできた可能性があるが、ネパールがタイプAを選択したまま工事を始めてしまった今では、簡単には解決できないのが現状だ。
このままだと、10月13日の閉幕日まで開館しない可能性も出てきている。
国や協会が「出展してほしい」と願い、オープンを楽しみにしている来場者も多い中、早期の問題解決に向けて、具体的な対応策が求められる。
参照元:Yahoo!ニュース