早期・希望退職を募集する大手企業続出、3年ぶりに1万人超の可能性 黒字のうちに構造改革か

早期退職を募る大企業

早期・希望退職を募集する大手企業が続出している。

今年に入ってからの上場企業による募集人数は、すでに2023年の通年を上回った。

人員削減は苦境下の最終手段とされてきたが、経営環境が良いうちに構造改革に踏み出す例も多くなっている。

14日に全従業員の5%にあたる500人の削減計画を発表したカシオ計算機の増田裕一社長。

カシオは中国経済の低迷で時計の販売が伸び悩み、24年3月期連結決算の最終利益は前期比8.9%減の119億円だった。

ペーパーレス化で複合機などが振るわないコニカミノルタも、来年3月末までに国内外で全体の6%にあたる2400人規模を削減する。

24年3月期は最終利益が5期ぶりに黒字転換したが、「1人当たりの生産性の高い組織に変革したい」という。

24年3月期まで2期連続で最終赤字のワコールホールディングスは、2年連続で早期退職を実施した。

今年は、150人程度の募集に対して215人の応募があった。

東京商工リサーチによると、今年の上場企業による早期・希望退職の募集は16日時点で国内で27社、計4474人(国内外の内訳が不明な企業を除く)に達した。

前年同期の3倍超で23年の3161人(同)を上回る。

このペースで進めば、3年ぶりに1万人を超える可能性がある。

人員削減はリーマン・ショックや新型コロナウイルスの感染拡大など、経営環境が厳しい時期に増える傾向があった。

しかし、今年は27社のうち17社は、直近の通期決算の最終利益が黒字だった。

資生堂は24年12月期に増収増益を見込むが、日本事業の収益改善に向けて早期退職を実施した。

24年3月期に9705億円もの最終利益を計上したソニーグループも、競争が激しいゲーム事業の子会社で900人程度を減らす計画だ。

集計の対象外の非上場企業でも、東芝が16日に国内の50歳以上の従業員を対象に最大4000人の早期退職を募ると発表している。

業績が比較的好調な企業が人員削減に踏み切るのは、固定費を削減することで市場の変化に対応しやすくし、中長期の競争力強化を図る狙いがある。

雇用市場の流動化が進んでいることも影響しているとみられ、東京商工リサーチの本間浩介氏は「事業転換のため、成長する事業以外での人員削減が目立つ。必要な人材を都度、補充すればいいと考えている」と指摘する。

その一方、安易な人員削減には優れた人材の流出というリスクもあり、「早期退職の実施は、経営陣に自信がないからだ。優秀な人材は早く去る傾向がある」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)との声も出ている。

東京証券取引所に上場する企業の2024年3月期決算がほぼ出そろった。

最終利益の合計は、前期比13.0%増の40兆9509億円で、3年連続で過去最高を更新した。

円安や値上げ、コロナ禍からの経済正常化が業績を押し上げた。

SMBC日興証券が、東証株価指数(TOPIX)採用企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、16日までに決算を発表した1284社(全体の99.5%)の業績を集計した。

製造業の最終利益が21.7%増の約23兆円となり、全体を押し上げた。

「輸送用機器」は、海外での収益が円安で膨らみ、約8割増の8.7兆円だった。

自動車大手7社すべてが売上高の過去最高を更新し、4社は最終利益も最高だった。

非製造業の最終利益は3.1%増の約17円だったが、値上げで黒字に転換した電気・ガス業を除くと減益だった。

コロナ禍で運賃や資源価格が高騰した海運や商社は、反動で業績が落ちた。

25年3月期の全体の最終利益は4.9%減と、減少に転じると見込まれる。

SMBC日興の伊藤桂一氏は「円相場の動きに加え、国内では賃金の上昇に伴う消費の動向、海外では米国経済の先行きが企業業績に影響する」と指摘している。

参照元∶Yahoo!ニュース