グーグルやアマゾンなどIT大手で「大量解雇」、従来とは「まるで違う」ポイントとは?

リストラをイメージした画像

テクノロジー業界で新たなレイオフ(従業員解雇)の波が押し寄せている。

人員削減追跡サイトによると、2025年第1四半期だけで2万4000人以上が影響を受け、90社以上が人員削減を実施したという。

特にメタは直近業績好調でも「とある理由」から全従業員の約5%の削減を計画し、グーグルも人事部門やクラウド部門で人員整理を進めているという。

テクノロジー業界に新たなレイオフ(従業員解雇)の波が到来している。

テック業界の人員削減を追跡するLayoffs.fyiによると、2025年に入ってからの解雇者数は2万4401人(2025年3月28日時点)に達し、90社以上が人員削減を実施したことが明らかになった。

特に大規模なレイオフを実施したのが、ヒューレット・パッカードだ。

同社は2024年第4四半期に前年同期比16%の増収を記録し、5億9,800万ドルの利益を計上したにもかかわらず、今後12~18カ月の間に2500人の人員削減を行う方針を発表。

これは全従業員の約5%に相当する規模となる。

アマゾンも大規模な人員整理を進めており、2025年1月にケベック州の7つの倉庫を閉鎖し、1700人の従業員が影響を受けた。

さらに同月、企業部門とコミュニケーション部門でも数十人規模の人員削減を実施。

2025年3月27日時点で、ペンシルベニア州で432人、カリフォルニア州で86人、バージニア州で88人の削減を行ったことが明らかになっている。

IBMもクラウド部門を中心に約9000人の人員削減を計画していることが報じられた。

同社は、「IBMの人材戦略は、顧客が必要とする業務を遂行できる適切な人材を確保することが基本」とした上で、「特にAIとハイブリッドクラウドの分野において、顧客から最も需要のある技能を持つ人材との整合性を図る」と説明している。

テック業界全体の人員削減規模を見ると、2023年は26万4000人超、2024年は15万2000人超と推移してきた。

2025年はまだ第1四半期が終わったばかりだが、すでに2万4000人を超える規模となっている。

この背景には、AIやクラウドといった成長分野への投資を加速させるため、既存部門の効率化を進める動きがあるとみられる。

なお、これらの数字には、在宅勤務からオフィス勤務への復帰命令に応じられずに退職を余儀なくされた従業員は含まれていないとされる。

テック業界における今回のレイオフは、これまでとは少し異なる様相を呈する。

それを象徴するのがメタのレイオフだ。

同社は従業員の約5%に相当する3600人規模の人員削減を計画。

マーク・ザッカーバーグCEOは、「パフォーマンス管理の基準を引き上げ、低業績者をより迅速に退出させることを決定した」と社内メモで通知した。

この動きは、シリコンバレーの伝統的な人材戦略からの大きな転換を意味している。

これまでテック企業は、競合他社への人材流出を防ぐため、生産性が十分でない従業員であっても高給で引き留める傾向にあった。

しかし、業界の収益構造が変化する中、各社は効率的な組織運営へと舵を切り始めている。

特に注目されるのは、メタが導入した新たな評価制度だ。

同社の人材開発成長プログラム部門のヒラリー・チャンピオン部長の社内メモによると、管理職は12~15%の従業員を最下位評価の対象として特定するよう指示されている。

すでに2024年中に5%の自然減があった場合、追加で7~10%の従業員を最下位評価に分類する必要があるという。

人員削減の通知は、アジア太平洋地域を皮切りに、欧州・中東・アフリカ、そして北米・南米の順で段階的に行われる。

米国の従業員に対しては、基本給16週間分に加え、勤続年数1年につき2週間分の追加給付を含む退職金パッケージが提示されている。

ただし、ドイツ、フランス、イタリア、オランダの従業員は現地の規制により対象外となり、別途現地のパフォーマンス管理プロセスに従うことになる。

この人員削減は社内に大きな不安を引き起こしている。

Business Insisderは、ある従業員のコメントとして、「マークは恐怖を作り出している。彼に忠実でなければならない文化を作っている」と指摘。別の従業員は「成果主義に基づく削減というレッテルは、新たな職を探す際に極めて不公平な影響を及ぼす」との懸念を示している。

なお、メタはAI分野での人材採用を積極的に進める方針も示しており、今回の人員削減が、AIを中心とした将来技術への投資を見据えた組織再編の一環であることも明らかになっている。

グーグルも2025年第1四半期にレイオフを実施したテック大手の1つ。

同社がレイオフに踏み切ったのは、主に人事部門(People Operations)とクラウド部門だと報じられている。

人事部門では3月初旬から米国の正社員を対象に自主退職プログラムを提供。

中堅からシニアレベルの従業員(レベル4および5)に対し、基本給14週間分に加え、勤続年数1年につき1週間分の追加給付を含む退職金パッケージを提示しているとされる。

この動きの背景には、AIインフラへの投資拡大がある。

CNBCが報じたところでは、アルファベット/グーグルのアナット・アシュケナジCFOは、2025年におけるAIインフラ投資の拡大に向けて、さらなるコスト削減を優先課題の1つとして挙げている。

2024年第4四半期の決算発表では、AI製品の需要が供給能力を上回る状況にあることが報告されており、事業構造の転換が急務となっている。

クラウド部門では、営業運営、カスタマーエクスペリエンス、社内取引、市場投入戦略などのチームに影響が出ているとの報道だ。

一部の業務はインドやメキシコシティに移転される見通しだが、同部門の最大の従業員拠点は引き続き米国に維持される方針だ。

重要な営業職やエンジニアリング職については採用を継続するという。

事態を重く見た従業員たちは、社内メモや従業員の証言に基づいて人員削減を追跡するドキュメントを作成。

その内容によると、広告営業チーム、AI製品「Gemini」のエンジニアリングチーム、トラスト & セーフティグループなど、複数のチームで人員削減が行われていることが明らかになった。

Business Insiderは、同社広報担当者の話として、これらのチームでの削減規模は200人未満と伝えている。

グーグルのレイオフは、2023年1月に全世界の従業員の約6%に当たる1万2000人規模の大規模なリストラを実施して以降、より小規模で戦略的な削減へと移行している。

2024年12月には、マネジャー、ディレクター、ヴァイスプレジデントといった管理職ポストの10%削減を実施、組織構造をフラット化する動きも進めている。

背景には、主力の広告事業における競争激化、データプライバシー規制による逆風などがあるとみられている。

一方でクラウドコンピューティングには継続的な設備投資が必要であり、非中核機能の人員を削減することで、競争力維持に向けた資金の再配分を図る戦略だと分析されている。

レイオフが続くテック業界だが、AIをはじめとする成長分野では別の様相を呈している。

求人市場は全体的に厳しさを増しているものの、優秀な人材を巡る競争は一部で過熱の様相を帯びており、福利厚生の内容にも大きな格差が生じ始めているのだ。

福利厚生制度支援を提供するBenepassの共同創業者ジャクリン・チェンCEOによると、大半の企業はコスト意識を強めており、福利厚生の見直しを進めるケースが増加傾向にある。

全従業員に提供していたジム会員権などの一律サービスを廃止し、個々の従業員のニーズに応じて選択できる柔軟な制度への移行を進めるケースが多いという。

また、ハイブリッド勤務の普及に伴い、オフィス内のイベントや食事の提供なども縮小傾向にある。

一方、OpenAIなど高い評価を受けているAIスタートアップは、手厚い給与と福利厚生パッケージで、優秀人材の囲い込みを狙う。

たとえば、無制限の休暇制度に加え、朝食、昼食、夕食の提供、コーチングセッション、医療保険、育児休暇、旅行手当などを提供。

一方、先日上場したばかりのCoreWeaveは医療、歯科、視力検査の保険料を100%カバーし、さらに育児支援やメンタルヘルスケアまでサポートの範囲を広げている。

特に注目されるのは、従来型の福利厚生からの転換だ。

かつてスタートアップ各社は、高額な給与、柔軟な勤務時間、リモートワーク、充実した有給休暇、ジム会員権や育児支援など、より多くの特典を提供することで人材を確保・維持しようとしていた。

グーグルやメタなどの大手テック企業も、豪華なキャンパスや特典で知られていた。

しかし、現在の状況は大きく変化しつつある。

IT認定プロバイダーのCompTIAの分析によると、テック業界全体の雇用は減少傾向にあり、新たな職を見つけるまでの期間が数年前と比べて大幅に長期化。

これにより従業員が他社の給与や特典に魅せられ、辞めていくリスクが低下しているという。

このような状況下で企業が注目しているのが、柔軟な福利厚生制度だ。

ライフスタイル支出口座を導入し、従業員がジム会員権、在宅勤務費用、ペットケアなど、複数のオプションから自由に選択できる仕組みを整備する企業が増加。

また育児休暇に加え、体外受精、不妊相談、養子縁組費用などをカバーする制度を導入する動きも広がっている。

参照元:Yahoo!ニュース