山火事は春先注意4月が最多 岡山・愛媛「樹冠火」で飛び火か

岡山、愛媛両県で3月に発生した山林火災は計1000ヘクタールが燃え、いずれも鎮圧したものの、それぞれ県内最大規模となった。
春先は野焼きをする機会が増え、空気も乾いているため山火事が頻発しやすく、国内の発生件数は4月が最多だ。
気象庁によると、今月も西日本の降水量は少なくなる可能性があり、専門家は警戒を呼びかけている。
岡山市と愛媛県今治市で3月23日に発生した山林火災は、岡山県内の焼損面積が約565ヘクタール、愛媛でも約442ヘクタールに上り、民家など計28棟を焼いた。
5~8日後に延焼の恐れがない鎮圧状態になったが、燃えた範囲が広く、いずれも鎮火には至っていない。
延焼拡大の要因について、東京科学大の鈴木佐夜香・准教授は、ニュース映像から、樹木の上部や先端部の枝葉が燃える「樹冠火(じゅかんか)」が発生したと分析する。
通常の山火事は、地表の枯れ草などが燃え広がる「地表火」にとどまり、火の粉が飛ぶ距離も数十メートル程度と短い。
しかし火勢が増すと、樹冠火に発展。
燃焼に伴う上昇気流が生まれ、1~2キロ・メートル先まで飛び火するという。
鈴木准教授は「広範囲に飛び火したことで、消火が追いつかなかったのでは」と話す。
今冬以降、大陸からの季節風の影響で乾燥しやすい状況が続いており、岡山、松山両地方気象台によると、1週間ほど前からまとまった雨が降らず、発生当日の最大瞬間風速も14メートル超だった。
風向きは南西からで、四国山地などを越えて乾燥した空気が流れ込み、火の勢いを強めた可能性がある。
さらに愛媛大の江崎次夫名誉教授(森林科学)は「山には可燃物がたくさんある状況だった」と指摘する。
瀬戸内海沿岸には油分の多いアカマツが分布し、竹林も広がる。
マツや竹の葉がたまり、燃えやすかったことも背景にあるとみる。
今治市は延焼原因を検証する協議会を設置する方針で、担当者は「樹木の管理状況がどうだったのか、調査したい」としている。
火災で山肌がむき出しとなった斜面は保水力が低下するため、江崎氏は「梅雨時期の大雨で土砂災害につながる恐れがある。早急な対策が必要だ」と警鐘を鳴らす。
総務省消防庁によると、林野火災は2019~23年の5年間で年平均1279件が発生し、月別では4月(257件)が最多。
今年に入り、岩手県大船渡市を含め、米国や韓国でも山火事が続いた。
仏の研究チームなどは、地球温暖化の影響もあると分析している。
林野庁は、▽火気の使用中はその場を離れない▽強風・乾燥時にはたき火をしない▽火入れを行う際、許可を必ず受ける――の注意点を挙げる。
京都大の峠嘉哉・特定准教授は「いつどこで起きてもおかしくない。細心の注意を払ってほしい」と話している。
参照元∶Yahoo!ニュース