100円ショップのダイソーがベトナムに拠点を置く理由

100円ショップをイメージした画像

ベトナム北部の首都ハノイから南東へ約120キロ。

大規模な工業団地や主要港があり、地場企業も進出するハイフォン市を訪ねた。

団地の一角には100円ショップのダイソーを展開する大創産業(広島県東広島市)の物流・生産拠点があった。

敷地は約9万平方メートルとマツダスタジアム4個分。

約520人が働き、日本でもおなじみの洗濯ネットやステンレスたわし、ストローなど約70品目を造っている。

物流倉庫も備え、現地企業から仕入れる商品も合わせて毎月約350万点を日本やブラジル、米国や台湾などへ輸出している。

大創産業を含め、地場企業がベトナムに拠点を置く理由には、人口の多さや人件費の安さだけではなく、貿易に適した立地の良さもある。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の2024年度の調査によると、日本企業が事業拡大を検討する国・地域のランキングで、ベトナムは米国、中国、欧州に次ぐ4位。

小売りや飲食、運輸や卸売りと、製造業以外の業種で特に拡大の意欲が強いという。

ベトナムの24年の貿易総額は7860億ドル(約117兆円)と過去最高だった。

ジェトロハノイ事務所の小篠春彦所長は、北は中国に隣接し、太平洋岸からは米国に輸出しやすい地理的な条件を挙げ「日本にとって戦略的ロケーションにある」とみる。

広島県内の企業の進出も相次ぐ。

ひろしま産業振興機構(広島市中区)によると、24年6月時点で41社が現地に拠点を置き、公表を始めた17年から9社増えた。

一方、経済発展に伴って賃金が急速に上がっている。

ジェトロの日系企業向けの24年度の調査では、製造業で働く作業員の基本給は月額302ドル(約4万5千円)と15年度の1.6倍。

非製造業のスタッフは1.8倍に上がった。

人材の獲得競争は激しい。

南部の最大都市ホーチミンにある、総合建設コンサルタント復建調査設計(東区)の合弁会社の南海(みなみ)輝(あきら)社長は「毎年5~10%の賃上げをしなければ、従業員は他の会社に行ってしまう」と説明する。

大創産業の現地法人の担当者も、給与面以外に「会社に親近感や愛着を持ってもらうことが重要だ」と受け止める。

現場を積極的に回り、従業員とのコミュニケーションを大切にしている。

ベトナムの人件費が上がる中、カンボジアに注目する地場企業もある。

人口は約1700万人と日本の15%ほどだが平均年齢は20代後半と若く、経済成長が見込まれる。

東にベトナム、西にタイがあり、ホーチミンやタイの首都バンコクはカンボジアの首都プノンペンと「南部経済回廊」と呼ばれる道でつながる。

物流会社のエムケー(東広島市)は年内のカンボジア進出を目指している。

広島アセアン協会の視察に参加した松川慎社長は「拠点性の高い国」と評価。合弁会社のあるミャンマーが内戦状態にあるのを踏まえ、政治の安定性も重視する。

参照元:Yahoo!ニュース