中学生で子宮全摘した17歳女性「希望となる1つの選択肢」、一方で「リスクがあるので移植を希望しない」女性も 慶大病院の子宮移植“承認”を考える

中学生の時に小児がんで子宮を全摘出した優衣さん(17)は、「まず私は中学2年生の頃に大量出血で緊急入院をしました。1カ月ほど様々な検査をして、子宮に腫瘍がある横紋筋肉腫という病気だとわかりました」と話す。
さらに、「私はその時妊娠も真剣に考えられない歳だし、メンタルもやられていたので子宮を全摘するかしないかっていうのが生きるか死ぬかの2択と思い、この先も生きるための選択肢は子宮全摘しかないのだなって」と当時を振り返る。
卵巣を残し子宮全摘出という決断をした優衣さん。
抗がん剤治療を経て、再発や転移もなく、現在は普通の生活を送ることができているという。
ただ、子宮全摘出という生きるための選択は、将来の夢も奪われる心境だったと振り返る。
「子どもを授かって母親になることが小さい頃からの夢だったので、夢が途絶えたような気がしちゃいました」(優衣さん、以下同)
「中学生ながらに考えていたのは、将来子どもを授かりたいって自分が思ったとしたら、代理母出産か養子をとるという選択肢があって。代理母出産に関してはまず日本で認められていなくて、海外に行ったとしても高額な費用がかかる。見知らぬ人に代理母としての責任を負わせていいのかっていうのと、やはりそれを近くで見てない自分も不安になっちゃうと思って『とても現実的ではないな』と感じたので。その時は母も私も自分でお腹の中で育てて妊娠することはできないんだなって思ってました」
そんな中、優衣さんに吉報が。
先日、慶應義塾大学病院では子宮移植の臨床研究計画が承認されたのだ。
子宮移植が可能になれば、諦めた夢を叶えられるかもしれないと優衣さんは期待を寄せている。
「生まれつき子宮がない方だったり、私のように子宮摘出を余儀なくされた方にとっては、とても嬉しいことだと素直に感じて、将来パートナーができた時に、幸せが増える選択肢があればいいなと思っています」
一方で、高校2年生の時に先天的に子宮がないロキタンスキー症候群の診断を受けた山本桜子さん(仮名)は、子宮移植についてこう語った。
「私は選択肢が1つ増えるっていう意味ではすごく嬉しいですし、これが希望になるんだろうなとは思いますね。私自身は子どもをあまり望んでいないので、パートナーと話してどうする?と、2人で答えが出てから考えたいなと思います。母は子宮移植をしてもいいと言っていますが、子宮を提供する側にも、もちろん提供してもらう側にも高いリスクがあるので、私はあまり希望していないですね」
さらに、弁護士の佐藤みのり氏は子宮移植について以下のように述べた。
「医療の技術が進歩するために、こうした臨床研究の承認ってすごく大事なことだと思います。あとはやはり、臨床研究の先にいる、子どもをこれから産む人たちにとって、子宮のない女性の選択肢が1つ増えていく。それは彼女たちにとって幸福追求権にも資するものだと思いますし、非常に意味のあることだとは思います。生まれてきた子どもを守るという視点も非常に重要だと思います。プライバシーの問題など色々あると思うので、まずは子どもも守る。臨床研究に協力した人たちも守る。その守る体制を整えた上で進めていくというのが大事だなと思います」
世界では20カ国以上で実施され、子どもも70例以上誕生している子宮移植。
ネット上では医療の発展を歓迎する声がある一方で、ネガティブな反応も多く見られた。
「賛否両論あるのはすごくわかるし当たり前だと思うのですが、私のように子宮がない人の希望となる1つの選択肢ということは、ネガティブな声を発する人も知っておいてほしいと思います」(優衣さん)
ネット上で拡散されやすい間違った情報について佐藤氏は、「やはり間違った情報でも、ネットは自分から情報を探しに行きますから、どうしても自分の知りたい情報ばかり見ていると、それが真実だと思ってしまう。さらに今度はそれを拡散させる。そうするとまた違った人と分断していって、差別や炎上が起きているのは本当に残念に思います。そういうことをなくしていくためには、ネットリテラシーを高めていくことだと思う。『自分と違う意見の人は何を言ってるんだろう』と見てみるとか。あとは信頼できる情報にあたり、そこを見て本当に正しい事実を知った上で判断していくという、基本的なスキルを子どもの頃から身につけていくようにしてほしい」と述べた。
参照元:Yahoo!ニュース