中国人の東大早慶“爆入学”の裏に母国での“超スパルタ教育” 授業は22時半まで、シャワーは週1回で「刑務所より不幸」の声も

かつて訪日中国人による“爆買い”が話題になったが、現在は“爆入学”なるワードが生まれている。
日本学生支援機構(JASSO)によると、2023年度の外国人留学生27万9274人のうち、中国人は前年度比11%増の11万5493人。
東京の新大久保や高田馬場など外国人が多く集まるエリアには、「東大○○人合格」などと掲げる中国人専門予備校がひしめきあう。
なぜ、中国の学生が日本の名門大学に続々と入学を果たしているのか。
背景には、母国で受けてきた“超スパルタ教育”の存在があった。
東大61人、京大31人、一橋大16人、早稲田大122人、慶応大51人……これは、中国人専門予備校の最大手「行知(こうち)学園」(東京・新宿区)の24年度の合格実績だ(※学部と大学院の合計数)。
生徒数は全国で3000人を超え、日本の名門大学への合格者数は年々増えている。
代表取締役の楊舸(よう・が)氏によると、背景には、中国国内での教育熱の高まりと子どもたちの基礎学力の向上があるという。
「中国は国力を上げるため、都市部の小・中学校に修士号を持つようなレベルの高い先生を雇用するなど、教育に惜しみなく投資をしています。また国内の経済発展に伴い、子どもの英語力を伸ばすためにアメリカに短期留学させるような中間層も増えている。行知学園が創業した17年前より、今の学生のほうがだいぶ優秀ですね。今年東大を受けた子たちで、TOEFL iBTテストで100点(英検1級レベル以上)を切る学生は一人もいませんでした」
学力向上に一役買っているのが、中国の学校で行われている“超スパルタ教育”だ。
行知学園の卒業生で、この春早稲田大学に入学する聶奕偉(じょう・えきい)さん(20)はこう話す。
「僕が通っていた高校では、朝6時半から夜10時半ごろまで授業や自習をする時間と決められていました。寮に入ると5分単位で生活のスケジュールを管理され、シャワーは週に1回、買い物や洗濯などができる自由時間は日曜日に4~5時間あるかどうかでした」
寮生の間では「刑務所の囚人より僕たちのほうが不幸だ」というジョークがよく聞かれたという。
「『大学に合格できなければ生きている価値がない』とまで言う先生もいて、卒業後の同窓会では学校や先生の悪口で盛り上がるのが恒例です。僕の友人が通っていた進学校では、自殺防止のためにすべての窓に金属の網が設置されていたそうです。日本で中国のような教育を行ったら、人権侵害で憲法違反になると思います」(聶さん)
中国には古くから「生まれは自分で決められないが、勉強すれば人生を変えられる」という価値観があり、スパルタ教育でも社会に受け入れられる土壌があるようだ。
学生生活のあり方として、部活や学校行事など青春を楽しむゆとりがある日本のほうが「圧倒的に良い」と話す聶さん。
日本の大学への留学を決めたのは、幼いころからアニメや書道を通じて日本に親しんできたことだけでなく、母国の政治事情の影響が大きいという。
「私は仏教哲学の研究者になりたいと思っているのですが、中国の大学で思想文化系の研究をする場合、国の指導者の意向と合わなければ政治的なプレッシャーを受けることがあります。研究の自由を確保するため、日本に行こうと思いました」
実は聶さんは、昨年4月に学習院大に合格している。
留学ビザを取得するためにいったん入学したが、1年間大学の勉強と受験勉強を両立し、早稲田大に入り直した。
なぜ仮面浪人という苦労をしてまで早稲田を目指したのか。
「学習院でも充実した研究はできると思いますが、もし研究者になる夢がかなわなかった場合、就職しなければなりません。日本の大手企業には学歴フィルターがあると聞くので、どんなフィルターでも突破できる大学に行ったほうがいいと思いました」
日本国内には、聶さんのような高い学力とモチベーションを持った学生が中国から押し寄せる状況を脅威と捉える見方もある。
有名大学の入学枠を中国人に奪われたら、日本人の学生がより合格しづらくなる……そのような懸念について、行知学園の楊代表は「視野が狭い」と一蹴する。
「そもそも、ほとんどの中国人学生は留学生枠で受験するので、日本人学生の入学枠が減ることはありません。入学後に優秀なライバルが増えるという意味で脅威に感じているなら、志が足りないように感じます。東大や京大レベルの学生はいずれ世界で戦うことになるのだから、早いうちから海外の研究者と切磋琢磨し、自分に足りないものと向き合ったほうがよいでしょう」
中国の学生が受験に向き合う“熱量”の高さは、日本の受験生たちにも良い刺激を与えそうだ。
参照元:Yahoo!ニュース