死刑執行の「当日告知」の是非問う裁判 「当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がないことの確認」の訴えについて1審に差し戻し 違憲・違法性を改めて大阪地裁で審理へ

大阪地裁の外観を撮影した画像

「死刑執行を執行当日に告知するのは憲法などに違反している」として、死刑囚2人が国を訴えていた裁判。

死刑囚側の訴えを全面的に退けた1審判決を不服として、死刑囚側が控訴していましたが、大阪高裁は3月17日、1審判決を一部取り消し、地裁に審理を差し戻す判決を言い渡した。

「当日告知に基づく死刑執行を受け入れる義務がないことの確認の訴え」について、1審は「確定した死刑判決と矛盾が生じる。執行方法についての違憲・違法性も刑事裁判で争うべき」として、却下=門前払いしたが、2審は「当日告知が違憲・違法=死刑判決が違法判決に帰するという関係は成立しない」として、改めて審理を尽くすべきと判断した。

日本の死刑執行は現在、執行の1~2時間前に死刑囚本人に告知されている。

この「当日告知」は法律で規定されているわけではなく、あくまで法務省による行政運用だ。

国は当日告知の理由について、これまでの国会答弁や法相の会見などでは、“死刑囚の心情の安定を害さないようにするため”としている。

この運用をめぐり、大阪拘置所に収容されている確定死刑囚2人は、死刑執行の差し止めを求めるわけではないとしたうえで、「当日告知」は刑罰執行の適正な手続きの面でも、人間の尊厳の面でも憲法や国際人権規約に違反していると主張。

国に対し、▽当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がないことの確認と、▽執行がいつ行われるか分からない恐怖=精神的苦痛などに対する2200万円の賠償を求め、2021年に大阪地裁に提訴した。

死刑執行の「告知のあり方」を問う裁判は、国内では初めてとみられる。

1審の大阪地裁(横田典子裁判長)は去年4月、“死刑執行方法については違憲・違法性も刑事裁判で争うべき”とした過去の判例に立脚したうえで、「当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がないと確認することは結局、死刑執行を許さない効果を生み、確定した死刑判決との矛盾を生じさせるから許されない」として、受忍義務がない確認を求めた訴えについて、不適法と判断し「却下」(=門前払い)した。

そのうえで、▽現行の死刑制度上、死刑囚には執行を受ける時期について自己決定権が認められないのだから、「執行の時期を事前に知り、それまで自分がどのように生きるかを決める権利」が保障されているとも言えない▽執行前日に告知を受けた死刑囚が自殺したケースがあった経緯を踏まえれば、当日告知は「心情の安定への配慮」などの点で一定の合理性がある、などとして賠償請求も「棄却」。

死刑囚側の訴えを全面的に退ける判決を言い渡した。

この判決を不服として、死刑囚側が大阪高裁に控訴していた。

大阪高裁(黒野功久裁判長)は3月17日の判決でまず、「当日告知に基づく死刑執行を受忍する義務がない確認を求める訴え」について、「仮に当日告知の運用が違憲・違法であるならば、執行前日までのしかるべき時期に告知を行うようにすればいいのあり、これにより適法に死刑を執行することは可能」「『当日告知の運用が違憲・違法=死刑判決自体が違法に帰す』という関係は成立しない」として、“訴えを起こすこと自体は適法”と指摘。

1審が不適法と判断して却下(門前払い)した部分を取り消し、審理を大阪地裁に差し戻した。

当日告知の違憲・違法性が、改めて大阪地裁で審理されることになった。

一方、慰謝料の賠償請求は、1審に続き棄却された。

死刑囚側の代理人「具体的にやっと審理されるスタートラインについた」

死刑囚側の代理人の植田豊弁護士は、判決後の会見で次のように話した。

植田豊弁護士「差し戻しという判断は、告知と同日での執行の是非について『司法がきっちり答えを出すべきだ』という、高裁の決意の現れだと受け止めています。具体的にやっと審理されるスタートラインについたという状況だと思います」

「ですから、その答えが出るまでの間には、その是非(違憲・違法か否か)が分からないわけですから、現在の運用(当日告知)での執行は、すべての死刑確定者についてなされるべきではないと考えます」

参照元:Yahoo!ニュース