「しょうゆの味が分からず」がん闘病の落合務シェフが語る味覚障害

味覚障害を患っている人

イタリア料理界の巨匠で、東京・銀座のレストラン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のオーナーシェフ落合務さん(77)が、血液のがんである悪性リンパ腫を患い、抗がん剤治療の影響で味覚障害に陥った経験を告白した。

「病院食ではしょうゆの味が分からないことがありました。好きなものを食べたい時に食べられないのはつらかったですね」と振り返った。

保険大手「アフラック生命保険」が新しいがん保険を発売するにあたり、13~14日に東京都内で開いたイベントで経験を語った。

イベントのタイトルは「味の変わるレストラン」。

塩気のない甘ったるい生ハムや、味がなく砂をかむようなハンバーグ――。

実際にがん治療によって生じる味覚障害の事例を再現したもので、国立がん研究センター中央病院の加藤健・消化管内科長が監修したメニューが並んだ。

加藤さんによると、抗がん剤の副作用により、吐き気や口内炎などの粘膜の異常、ドライマウスや嗅覚異常が起き、患者の約7割が味覚障害の症状を感じることがあるという。

落合さんは2021年3月、疲労感が続いたため医療機関を受診したところ、ステージ4の悪性リンパ腫だと告げられた。

生き延びる確率は「五分五分」という医師の言葉を、「おー、半分助かるんだ、ラッキー」と前向きに受け入れた。

入院して抗がん剤の治療を受け、21年11月に一旦は寛解(症状が治まった状態)した。

「イエイ」と喜んだのもつかの間、退院後に自炊したところ、「しょっぱくて食べられない」と家族に指摘された。

塩味に鈍くなる味覚障害が起きていた。

体調が回復するにつれて、徐々に味覚は正常に戻っていったが、24年6月に悪性リンパ腫が再発。

2度目の抗がん剤治療が始まると、再び味覚障害も起きた。

落合さんは「小腸には穴が開いていて、縫合のために2週間絶食し、他人がラーメンを食べている動画を見てうらやましかった。だけど抗がん剤が体内に入っている時は食べたいという気持ちは起きなかった」と振り返った。

コロナ禍での闘病を機に、レストランの運営からは遠ざかっている落合さんだが、イベントでは、牛ヒレ肉のロースト、フルーツトマトのパスタなどの特別メニューを提供した。

「今日の料理はおいしいでしょう? 味覚は戻ってくるから。それに後遺症の手足のしびれや体力の回復も必要。ゆっくりゆっくり頑張りますよ」と話し、豪快に笑った。

参照元:Yahoo!ニュース