子どもの頭にフケ と思ったら「アタマジラミ」 毎日シャンプーしていても「うつる」理由とは 専門医に聞く

「アタマジラミは昔のもの」「毎日シャンプーをしているから大丈夫」――そう思っていないだろうか?
実は、アタマジラミはどんなに清潔にしていてもうつる身近な寄生虫。
今も小学生の間でよく見られる。
かゆみが生じると、勉強に集中できなくなったり、気になって心の負担になったりすることも。
フケと見分けがつきにくく、気づかないうちに広がることもあるため、早めの対処が欠かせない。
琉球大学病院皮膚科の山口さやか先生は「人ごとだと思わず、正しい知識を持つことが大事」と話す。
――小学校から「アタマジラミに注意」のプリントが配布されることがあります。アタマジラミはどのようにうつるのですか?
基本的には頭と頭の接触ですね。
そんなにずっと頭をくっつけていなくても、友達の髪の毛がフワッと触れただけでもうつることがあります。
アタマジラミは羽のない虫で、飛ぶことはできませんが足が速く、あっという間に隣にいる人の髪の毛にもぐりこみます。
顕微鏡で見ると、アタマジラミの指先には鋭い爪がついていて、しっかり髪の毛にしがみついて簡単には離れません。
水中でも落ちないため、毎日シャンプーをして清潔にしていてもうつるのです。
夏のプール開きの前に見つかることが多いのですが、アタマジラミに季節性はなく、寒い時期でもうつります。
アタマジラミというと「衛生状態が悪いから」というイメージがあるかもしれませんが、それは誤解です。
だれにでもうつる可能性があります。
恥ずかしいと思って隠したり、いじめの対象になったりしないか心配する人もいるのですが、正しい知識を持ってほしいですね。
――子どもの頭にアタマジラミがいないか、家庭で調べる方法を教えてください。
アタマジラミが繁殖して頭皮から吸血すると、強いかゆみが生じます。
お子さんが何度も頭をかいていたり、学校から注意喚起されたりした時は、髪の毛をかきわけてチェックしてみてください。
アタマジラミの虫体はすばしっこくてなかなか見つかりませんが、卵はすぐにわかります。
髪の毛の根元近くに白っぽい粒のようなものがたくさん付いていたら、卵の可能性が高いですね。
特に、耳のうしろあたりを好むので、念入りに探してください。
アタマジラミの卵はフケと似ていますが、フケは手で払うと簡単に落ちるのに対し、卵はしっかり固着していて引っ張ってもなかなか取れません。
また、卵は少しキラキラした光沢感があります。
可能であれば、自然光のあたる明るいところで見るとわかりやすいと思います。
判断がつかない場合は、皮膚科へ行って顕微鏡や拡大鏡で確認してもらうといいでしょう。
――髪の長さと、アタマジラミのうつりやすさは関係していますか?
私たちのところを受診するお子さんは、短髪の男の子より、髪の長い女の子のほうが多い印象があります。
なかなか治らない場合は、治療の一環として、本人が望めば髪を短く刈ることもあります。
ただ、丸刈りに近いくらいの短髪でなければ駆除はできず、ショートカットくらいの長さであればアタマジラミがうつる可能性は十分にあります。
――アタマジラミが見つかったら、どのように対応したらよいのでしょうか。
現状では、医療機関で処方できる薬はなく、市販薬を使って自宅で駆除することになります。
ドラッグストアなどで、ピレスロイド系の専用シャンプーが売っています。
これで頭を洗い、5分たってから流します。
もう1種類、ジメチコン製剤の専用ローションもあり、これを頭に塗り広げ、やはり5分おいて通常のシャンプーで洗い流します。
どちらも2~3日おきに、3~4回繰り返すので、アタマジラミの駆除には1週間から10日ほどかかります。
なお、薬を使っても髪の毛に固着した卵や、卵の抜け殻は取れません。
目の細かいくしですいて物理的に除去していく必要があります。
――けっこう地道な作業なのですね。この間、注意すべきポイントを教えてください。
まず大切なのは、家族全員が一斉にアタマジラミを駆除することです。
きょうだいや親子は接触が多いので、だれか一人でもアタマジラミが残っていると何度もうつし合う「ピンポン感染」になり、駆除が長期化してしまいます。
アタマジラミが見つかったら、家族みんなの頭をチェックしましょう。
卵が見つかった家族はみんなで市販薬を使い、なるべく頭を接触しないように気をつけましょう。
タオルや帽子などの共有も避けたほうがいいですね。
意外と多いのが、お子さんたちはしっかり駆除できても、親御さんが十分にできないケース。
お子さんの頭はお母さんが見てあげられるけれど、お母さんの頭は自分でなんとかするしかない……という場合があるのです。
家庭内で協力して、子どもも大人もしっかりアタマジラミを駆除しましょう。
――アタマジラミが付いている可能性のある衣類や寝具は、なにか特別な対処が必要ですか?小学校の給食の白衣はアイロン掛けをしたほうがいいのでしょうか。
いいえ、衣類も寝具もいつもと同じように洗濯をすれば十分です。
アタマジラミは人間の頭から吸血しないと生きられない虫で、頭から離れるとすぐに弱り2~3日では死んでしまいます。
念入りに処理したいなら、衣類や寝具、ぬいぐるみなど、ビニール袋に入れて密閉し、2~3日放置しておくことをおすすめします。
アタマジラミは熱に弱いので65度以上のお湯に10分以上つけるか、衣類乾燥機にかけるのもいいでしょう。
もちろんアイロンをかけるのも有効ですが、そこまでしなくても大丈夫です。
給食の白衣などは気を使うかもしれませんが、アタマジラミ対策としてのアイロン掛けは不要です。
いつもと同じようにしていれば問題ありません。
参照元:Yahoo!ニュース