「食欲なくなり、涙出た」裁判員裁判の制度から15年 判決後のSNS上の誹謗中傷、命の重みへの苦悩

裁判官の写真

裁判員制度の施行から今月で15年。

市民が刑事裁判に参加する中で、さまざまな課題も浮かび上がっている。

神戸地裁姫路支部で2月、稲美町で令和3年11月に起きた放火殺人事件の裁判員裁判の判決が言い渡された。

小学生の兄弟が犠牲となり、検察側は死刑を求刑したが判決は懲役30年。

SNS上などではこの量刑に対し、「軽すぎる」などの批判的な意見も散見された。

極刑か死刑回避か。

裁判員には、兄弟と被告、双方の命の重みがのしかかった。

判決後、裁判員や補充裁判員ら計7人が記者会見に臨み、そのうちの1人は「食欲がなくなり、涙が出たり、眠れなかったりする日もあった」と重圧を吐露した。

SNS上の批判的な声に、落胆したり反論したりする裁判員もいた。

裁判官や自身らに対する誹謗(ひぼう)中傷とも取れる意見があったと指摘したある裁判員は、「嫌な思いになった」と肩を落とした。

別の裁判員も、SNS上には「極刑だろう」と決めつける意見が目についたという。

「被害者は正義で加害者は悪」という一方向的な見方を押しつけるようだったと、報道のあり方にも疑問を投げかけた。

SNS上では自由に発言することが許される。

ただ、心ない意見が裁判員を萎縮させてしまうとすれば、市民感覚を反映させる裁判員裁判の趣旨をゆがめかねない。

最高裁によると、平成21年5月の制度開始以降、今年1月末までに裁判員や補充裁判員に選ばれた人は延べ約12万人。

地裁姫路支部では令和5年、裁判員裁判で10件の判決が下されている。

職業も思想も信条も違う人たちが市民の代表として、その事件ごとに責任を果たしてきた。

選任は無作為で誰でも次に裁判員になる可能性もある。

もし自分が裁判員だったら-。

裁判員に対する発言は、判決を導く裏側にまで思いをはせたものであってほしい。

参照元:Yahoo!ニュース