「誰にも気づかれずに、孤独焼死」限界集落の「限界」に直面する山村

孤独に過ごしている人をイメージした画像

高知へ赴任して、耳を疑った話がある。

山奥の集落で民家が全焼する火事が起きた。

だが、翌朝まで半日以上誰も気がつかなかった。

焼け跡からは、住民の男性が遺体で見つかったという。

「誰にも気づかれずに焼け死ぬ。だから孤独焼死と呼んだ」。

地元紙の記者が、そう教えてくれた。

火事は2021年2月、愛媛との県境に近い仁淀川町別枝(べっし)地区で発生した。

夕方ごろから燃えたとみられる民家は一晩かけて完全に焼け落ち、外壁さえも残っていなかったという。

現場は周囲に人の住む家が見当たらない限界集落だ。

「隣近所で助け合いたいが、マンパワーにも限界がある」。

町役場の担当者は力なく語った。

人がいなくなることの深刻さは「地方」から現れる。

高知で暮らして4年。

どんな取材も人口減少や少子化と隣り合わせだった。

高校野球では県立高の部員不足は常態化。

220キロも離れた高校が「連合チーム」を作ったこともあった。

全国に知られる「よさこい祭り」も例外ではない。

1万人を超える踊り子を迎えるボランティアスタッフを確保できず、祭りが行われる会場の一部が開催を断念した年もあった。

そうした取材経験が、新聞記者として人口減少と向き合わなければならないと考えたきっかけだ。

昨春には、元総務相の増田寛也氏らの研究機関が、全国の4割にあたる744自治体が将来「消滅」する可能性があると指摘し、人口減少は再び注目を集めた。

日本の人口は今後さらに急減していく。

今の形のまま地域や自治体が残るとは考えにくいとの前提に立ち、地域の未来を考える「8がけ社会 消滅の先へ」と題したシリーズを全国の同僚と担当した。

自ら集落をとじる「むらおさめ」を受け入れた地域。

適当に「疎」(ゆとり)がある「適疎(てきそ)」を目指す自治体。

描く未来像はそれぞれ違う。

高知県では新年度から社会インフラを縮小して人口減少に適した形への再編を始める。

消防の広域統合や県立高の再編などが俎上(そじょう)に上がっている。

浜田省司知事は「人口減少が続く地域の参考にもなるものを作っていきたい」と意気込む。

日本は今から15年後の2040年に現役世代が8割に縮む「8がけ社会」を迎える。

地方の「消滅」の先に都市機能は維持し続けられるのか。

都会で暮らす人にとっても、ひとごとではないはずだ。

参照元∶Yahoo!ニュース