携帯大手、値上げへ虎視眈々 業績好調で批判は必至「火中の栗拾う」 政府の介入に警戒も

値上げをイメージした写真

物価高騰を受け、携帯電話大手3社が料金値上げの機会を虎視眈々とうかがっている。

ソフトバンクとKDDIは通信品質を維持する目的などとして値上げへの理解を求めており、シェアを死守するために主力プランへの実質値下げに踏み切ったNTTドコモも格安プランの見直しを匂わせる。

ただ、菅義偉政権で実現した〝官製〟値下げは一服しており、令和6年4~12月期連結決算決算は3社とも増収。

値上げは世論の猛反発が予想され、「『火中の栗を拾う』は誰か」と横にらみの我慢比べに陥っている。

新ブランドの名称は「世界で一番強かった通信が今やただ安いだけの国になってしまった」

ソフトバンクの宮川潤一社長は10日の決算会見で本音を漏らした。

宮川社長は「値下げ一辺倒の議論では、(従業員や取引先の賃上げを)支えられない。開発力も落ちてしまった」とし、「どこかで声を上げるつもりでいる」と述べた。

ただ、ソフトバンクは、6年4~12月期連結決算で営業利益が2桁増益となった。

宮川氏も「本業(の携帯事業)も成長軌道に戻ってきた」と業績回復をアピールしている。

同じく増収増益だったKDDIは4月1日付けで取締役執行役員常務の松田浩路(ひろみち)氏が新社長に就任する。

高橋誠社長は新社長の発表会見で、「(料金は)今やアメリカの2分の1以下の水準まで落ちている。諸外国は今どんどん値上げをしている。この環境でも、(日本勢は)必死で設備効率を上げながら投資に向けてきた」と振り返った。

松田常務は「今の足元での競争環境にしっかり対応していくという話と、将来どういうふうな絵姿に持っていきたいのかという観点がある」とし、就任時に自身の経営戦略を打ち出す予定で、料金体系の行方も注目される。

NTTドコモは通信品質低下などで落としたシェアのてこ入れ策などで減益だったが、非通信事業が好調で増収を確保している。

親会社のNTTの島田明社長は「35%のシェアは絶対切るなといっている」と発破をかける。

ドコモは昨年9月、「ahamo(アハモ)」のデータ容量を20ギガから30ギガに増やす〝値下げ〟を実施し、守りを固めた。

投資家向け説明会で「料金が安すぎるのでは」と問われたNTTドコモの小林啓太副社長は「今の料金を単純に、何%上げましょうというわけにはいかない」としつつも、「格安プランは変えてもいい」と値上げを示唆した。

料金値上げの動向を左右するのが携帯電話事業への本格参入から5年でようやく黒字化の道筋が見えてきた楽天モバイルだ。

楽天は昨年6月から、屋内や地下でも電波が届きやすい「プラチナバンド」の商用利用を開始。

契約回線数も昨年末時点で830万回線を突破、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「(7年1~12月)通期の黒字化は極めて可能性が高い」と自信をみせる。

1000万回線を目標に掲げており、盤石なネット通販や金融サービスなどで顧客を囲い込むことができるだけに、大手は楽天のシェア拡大をこれ以上許すことはできない。

割り引き策なしで、容量無制限の価格を比較すると、楽天の料金は大手3社の半額以下。

楽天モバイルの鈴木和洋共同CEOは「(大手は)決算をみても、まだまだ大きな利益を挙げられているし、日本の通信市場としては下がる余地がある」と挑発する。

携帯電話料金をめぐっては、菅氏が官房長官時代の平成30年に「4割値下げ」を表明。

消費者から圧倒的な支持を受け、首相就任後も料金値下げを押し進めた。

〝官製値下げ〟は総務相を経験し、通信行政に並々ならぬ意欲を燃やした菅氏だったからこそ実現した。

ただ、政府が介入する前例ができたため、値上げは「寝た子を起こす」ことにつながりかねず、息をひそめている状況だ。

参照元∶Yahoo!ニュース