約170店の大量閉店! ドミノ・ピザは2位に転落するか? 1位を狙うピザハットとの違い
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ドミノ・ピザジャパン(東京都品川区)が、国内172店舗もの大規模閉店を断行するということで、話題になっている。
同社の親会社である、オーストラリアのドミノ・ピザ・エンタープライゼスが2月7日に「包括的な戦略の見直しのため、収益性を向上させるために、赤字店舗を閉鎖する」と発表した。
撤退するのは世界で205店、そのうちの8割が日本だ。
この店舗リストラにより、年間で約1550万オーストラリアドル(約15億円)のコスト削減に寄与するという。
ドミノ・ピザエンタープライゼスは、ドミノ・ピザのマスターフランチャイズ企業として12カ国で4000店舗弱を展開する。
2025年度上半期の既存店売上高は、グループ全体では前年同期比0.6%減であった。
しかし、地域別では、アジア4.2%減、オーストラリア・ニュージーランド0.6%増、ヨーロッパ0.6%増となっており、アジアの不振が足を引っ張った。
アジアの内訳を見ると、台湾とシンガポールでは10%成長をしていた。
クリスマスシーズンに持ち直したものの、日本の不振が響いた。
日本の店舗数は約1000店舗。
コロナ禍の巣ごもり消費を追い風に増加を続け、ドミノ・ピザエンタープライゼス全体のおよそ4分の1が日本の店舗である。
グループ内で店舗数が最大の日本法人が不調だと、グループ全体の業績に大いに悪影響を及ぼすことから、2024年7月にも80店の不採算店を閉めると発表していた。
しかし状況がさらに悪化したようだ。
同じ宅配ピザでも、日本ピザハット・コーポレーション(横浜市)の「ピザハット」は店舗数を大きく減らさず、600店舗ほどキープしている。
同業種でありながら、ドミノ・ピザとピザハットは、なぜ明暗が分かれてしまったのだろうか。
コロナ禍の急拡大に懸念もあった コロナ禍で、ドミノ・ピザの快進撃には、目を見張らされた。
しかし、同時にかつての「東京チカラめし」「いきなり!ステーキ」のように性急な店舗拡大による「店舗同士のカニバリゼーション」や「経験不足の店員急増によるクオリティーの低下」を心配する向きが宅配業界内にあった。
東京チカラめしは国内最大で約130店あった店舗が2店に、「いきなり!ステーキ」は約500店あった店舗が175店にまで激減している。
ドミノ・ピザジャパンは、1985年に東京・恵比寿で1号店を出店した。
日本で展開するに当たり、当時国内のチェーン展開を担当したアーネスト比嘉氏(現ウェンディーズ・ジャパン会長、ファーストキッチン会長、ヒガ・インダストリーズ会長兼社長)は、米国のように自動車でピザを運ぶのは、日本の狭い道路事情では難しいと判断。
三輪バイクを導入して、わざわざ外食に出ずとも、家まであたたかいピザを迅速に配達してくれる、全く新しい宅配ビジネスとして市場を開拓した。
現在はピザ以外にも寿司、弁当などにフード宅配は拡大しているが、元祖として市場形成にドミノ・ピザが果たした役割は絶大である。
その後、ドミノピザ・ジャパンは2010年に米国投資ファンドであるベインキャピタルの100%子会社となる。
ドミノ・ピザエンタープライゼス傘下に入ったのは2013年だ。
当時の国内の店舗数は業界2位の216店、2013年3月期の売上高は215億円だった。
当時の業界1位は「ピザーラ」で、店舗数では2倍以上の差がついていた。
直営主義で経営してきたのドミノ・ピザに対し、ピザーラはFC(フランチャイズ)方式だったことで、迅速に拡張できた面があった。
外資系資本となったことで、ドミノ・ピザは積極的な拡大路線に走った。
FCも活用しながら店舗数を増やし、2019年に600店目となる銀座店をオープン。
店舗数と売り上げで国内首位に立ったと発表している。
急成長の要因には、女性の社会進出によって夕飯に宅配を注文する機会が増えた点が挙げられる。
2014年に本格スタートした「持ち帰り2枚目無料」も奏功した。
かつて宅配店舗は立地を選ばず、家賃の安い2等地、3等地と目立たない場所に構えることが多かった。
しかし、この頃から店舗で購入しやすいよう駅前や生活道路沿いの1等地に出てきた。
ドミノ・ピザの店舗を目にする機会が多くなり、実際の数よりも急増したイメージを消費者に印象付けた。
この勢いのまま、コロナ禍に突入。
感染リスクを回避するため、外食のニーズが激減したことでウーバーイーツ、出前館などが一般化し、デリバリーに特化した業態が急成長した。
宅配ピザの注文も激増し、一気に勝負に出た。
ドミノ・ピザは競合に圧倒的な差を付けて、マクドナルドのようなガリバー企業になろうと、2028年までに1000店達成を目標に掲げた。
2020年5月には「業界初」となる、デリバリー最低注文金額の完全撤廃を実施。
その後、2021年に目標を1500店へ上方修正し、2023年には1000店に到達するとともに、2033年までに2000店まで拡大すると宣言した。
しかし、上述の通り2024年7月に不採算店80店の撤退を発表し、今般のさらなる大量閉店である。
コロナ禍を千載一遇のチャンスと出店しまくったものの、ニーズが追い付かなかったわけだ。
オーストラリアのドミノ・ピザ・エンタープライゼスは決して無茶な経営をする会社ではなく、店舗を出し過ぎて失敗したのは日本法人だけである。
東京チカラめしやいきなり!ステーキの実例からも、いったん「落ち目」と人々が認識し、失墜したブランドが盛り返すのは容易なことではない。
今後は、コロナ前の600店くらいまで減る可能性が高い。
大都市圏以外や、駅から離れた持ち帰り需要が少ない店から切っていくだろう。
ドミノ・ピザに限らず、宅配・デリバリー市場は外食の復活により、全般に縮小している。
2024年12月にサカーナ・ジャパン(東京都港区)が公表した「デリバリー市場レポート」によれば、同年1~12月のデリバリー(出前)市場規模は7967億円、前年同期比7.6%となった。
とはいえ、2019年比では90.5%増であり、一定のニーズはあることから、どこで下げ止まるかが注目だ。
直近の決算でも、宅配寿司「銀のさら」、宅配御膳「釜寅」などを展開する、ライドオンエクスプレスホールディングスの2025年3月期第3四半期連結売上高は、171億4700万円で、前年同期比2.3%減。
出前館の2025年8月期第1四半期の連結売上高は110億480万円、前年同期比8.7%減とやはり落ち込んでいる。
何も、ドミノ・ピザのみが苦戦を強いられているわけではないのだ。
しかし、ドミノ・ピザのコロナ禍における発展ぶりが強烈だっただけに、凋落の印象が強く見えてしまっている。
ドミノ・ピザほど目立たず、着実に店舗を伸ばしてきているのがピザハットだ。
運営会社はもともと日本KFCホールディングスの傘下にあったが、2017年6月に投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドが買収。
約5年で400店舗弱から500店規模まで店舗数を伸ばし、2022年3月期の売上高は約209億円、約13億円の経常利益が出ていた。
その後は食品商社のヤマエグループホールディングスが2022年8月に買収している。
まだ続いていたコロナ禍を追い風に、2023年8月に47都道府県への出店を達成し、2024年4月に600店に達した。
コロナ禍で100店舗以上を増やしたが、ドミノ・ピザと比較して無理のない拡大といえるだろう。
500店台で停滞しているピザーラを抜き、店舗数では業界2位に浮上している。
ピザハットも当然、国内店舗数1位を目指し1000店を目標に掲げる。
ヤマエグループホールディングスの中核企業が福岡市に拠点を持つこともあり、九州で100店舗の出店も目標となっている。
ドミノ・ピザが大量に閉店していくのであれば、立地を選んで居抜きで入る展開もありそうだ。
ヤマエグループホールディングスは7000億を超える年商があり、体力もたっぷりある。
このままの勢いならば、3~5年以内に宅配ピザの店舗数1位は、ドミノ・ピザからピザハットに交代する可能性が濃厚だ。
商品的に見れば、ドミノ・ピザとピザハットは、おひとり様向けの個食対応の商品に力を入れつつあって、ピザーラなどに先行している。
ドミノ・ピザには「ピザBENTO」、ピザハットには「マイボックス」という、小サイズのピザにフライドポテトなどを付けて販売する、個食向けの商品がある。
一方、ピザハットにはドミノ・ピザのようなライスボウルのメニューはないが、おにぎりをヒントに開発された「ハンディメルツ」という、というワンハンドでサクッと食べられるメニューがある。
また、「天下一品」とコラボしたり、二郎系の背徳感の高いピザを開発したりと、奇想天外な商品があるのもポイントだ。
1月18日に発売したチーズとろとろの「飲めるピザ」シリーズも、3月9日までの限定販売ながら、早々と売り切れた店が多い。
ピザハットが好調な要因として、欧米の発想の延長線上にあった、これまでのピザの商品開発に対して、一石を投じていることが挙げられる。
ドミノ・ピザが退却戦の泥沼から脱するには、ピザハットのようにこれまでのイメージを一新し、同業他社を圧倒する新商品開発または店舗開発が必要だろう。
ドミノ・ピザは1月15日、東京・有明の「住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン」内の新しいフードコート「アリアケ フード ステージ」に、初のデリバリーを行わない、イートインとテークアウトの店をオープンした。
フードコートでの“普通のファストフード店”出店がドミノ・ピザにとって打開策になるのか。
今後の巻き返しに期待したい。
参照元∶Yahoo!ニュース