ココイチ、カツカレー1000円で遠のく客足 限界近づく外食の値上げ

ココイチのカレーを撮影した写真

カレー専門チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)」から客足が遠のいている。

ココイチを展開する壱番屋によると2024年9月以降、既存店の客数が5カ月連続で前年同月を下回り、同期間の累計で約5%減った。

24年8月、原材料や光熱費、人件費などの上昇を理由にベースとなるカレーなどで平均10.5%の値上げを実施したことが一因と見られる。

壱番屋の担当者は「持ち帰りやデリバリーの注文が減少したことが大きな理由」としながらも、「(価格改定の影響は)ゼロではない」と認める。

同社は新型コロナウイルス禍からの業績立て直しに向け、22年6月と同12月に立て続けに値上げした。

主力商品の一つであるポークカレーは2度の値上げを経て、514円から591円(東京都、神奈川県、大阪府の販売価格)になったが、それに伴う大きな客数減は起こらず、来店客に受け入れられてきた。

ところが、24年8月に三たび値上げをした途端、客入りが急激に鈍ったのだ。

地域別価格を廃止し、東京など3都府県とその他地域で価格を統一。

ポークカレーは、その他地域で76円の値上げとなる646円とした。

ココイチではベースとなるカレーに好みのトッピングを追加する客が多く、トッピングの値上げも客足に影響したようだ。

24年8月の値上げ率を見ると、トッピングが平均13.5%とベースカレー(10.5%)を上回った。

この結果、ポークカレーにロースカツを追加すると998円。

さらにチーズも加えると1262円と軽く千円超えとなる。

壱番屋の開示資料によれば、ココイチの客単価は24年3〜8月の平均値で1161円。

今回の値上げで客単価はさらに上がっていると見られる。

企業調査の分析広報研究所の小島一郎チーフアナリストは「ココイチは外食業界の中でも先んじて値上げを実施してきたが、消費者側が上昇する価格に追いつくことができなくなっているのではないか」と話す。

25年に入っても原材料高の勢いは止まらず、他の外食チェーンにも値上げラッシュの波が押し寄せている。

2月13日、ロイヤルホールディングス(HD)は展開する「ロイヤルホスト」と「天丼てんや」の一部商品を値上げした。

ロイヤルホストは24年9月以来約5カ月ぶり、てんやに至っては前回の値上げ(24年11月)から3カ月ほどしかたっていない。

ロイヤルホストではグランドメニュー全51品のうち43品について30〜250円値上げし、ランチメニューも対象の21品を30〜200円引き上げた。

コメ高騰の影響に加えて、肉や魚の多くを輸入していることから為替の影響を受けやすいことも値上げの理由になっている。

ロイヤルHDの阿部正孝社長は「(値上げをして利益を上げたいというよりは)この物価高に食らいついているというのが正直なところ」と心境を吐露する。

原材料価格について「24年はやや安定した価格推移で収まっていたが、年後半からコメをはじめ、非常に価格のコントロールが苦しくなっている」と話す。

値上げへの対応に苦慮しているものの、業績へのマイナスの影響は今のところ回避できている。

ロイヤルHDが2月14日に発表した24年12月期の連結決算は、売上高が前の期比10%増の1521億円、純利益は47%増の59億円といずれも過去最高を更新した。

ただ、客数への影響はやはり気がかりだ。

ロイヤルホストでは24年7月ごろからほとんどの月で前年割れとなっている。

同社の広報担当者によると、23年はコロナ禍後の客数の戻りが比較的早かったためにその反動で下がっており、「価格改定による影響ではない」と話す。

とは言え、客数が前年割れする中での値上げは、さらなる客数の減少を引き起こしかねない。

「現在(ロイヤルホストの)客数は前年比97%前後で推移しているが、ここからさらに3%ほど下がれば値上げによる客離れが起きていると言えるだろう」と広報担当者は話す。

ファミレス大手のすかいらーくホールディングス(HD)も、現時点で値上げによる客離れは起きていないという。

主力チェーンの「ガスト」で24年11月に値上げを実施。客単価は計画通り上昇した。

同社マーケティング本部マネージングディレクター平野曉執行役員は「アプリでクーポンを配布するなどの販促効果によって、プライシングというネガティブな要素が払拭されている」と分析する。

同社は2月13日に24年12月期決算を発表し、25年12月期の連結売上高が前期比11%増の4450億円と過去最高となる見通しを示した。

純利益も6%増の148億円を見込む。

日本フードサービス協会(東京・港)が1月に発表した「外食産業市場動向調査」によると、24年の外食業界の市場は3年連続で前年比の売上高を上回り、堅調に回復している。

客数においても、ファストフード、ファミリーレストランなど統計をとったすべての業態で前年を上回った。

ただ節約志向を強める消費者を呼び込むため、採算悪化を覚悟で割り引きキャンペーンや価格据え置きなどを実施するチェーンも出始めており、業界全体で見れば業績悪化リスクは高まっている。

外食業界に詳しいいちよし経済研究所の鮫島誠一郎首席研究員は「現時点で客数に影響が出ている店は一部に限られているため、消費者はある程度値上げを受け入れていると見られる。しかし、これ以上の値上げは客数の減少につながるだろう」と話す。

消費者が許容できる値上げの限界点はどこか。25年は各チェーンが模索することになりそうだ。

参照元∶Yahoo!ニュース